ウォッチジャーナリスト高木教雄が、最新作からマニアックなトリビアまで、腕時計にまつわるトピックを深く熱く語る。第1回は、2019年新作時計発表会「TIME TO MOVE」からのレポート第一弾

BY NORIO TAKAGI

 そう、レジャーとして人気のスクーバダイビングは、常に危険と隣り合わせにあり、潜水できる深度や時間には限界がある。それをサポートするダイバーズウォッチには、ダイバーの安全を守るために必要な11項目の要求事項が国際標準化機構(ISO)によって制定されている。元来は、これらの項目に準拠し、ISOによる試験に合格しなければダイバーズウォッチを名乗れない。しかし試験が煩雑でかつ費用もかさむため、ほとんどのメーカーが、これに準ずる社内規定と試験を制定し、ダイバーズウォッチとしている。日本工業規格(JIS)やドイツ工業規格(DIN)にも、ダイバーズウォッチに関する要求項目がある。

 グラスヒュッテ・オリジナルの5番目となる新コレクション「スペシャリスト」の第1弾「SeaQ」は、ISOとDIN、両方のテストをクリアした真のダイバーズウォッチ。そのレトロな見た目は、1969年に誕生した同社初のダイバーズウォッチの再現である。ケースサイズは比較的小振りで、薄型。これならスーツにも、違和感なく合わせられそう。もちろん高い防水性は、アウトドアで心強い。

画像: グラスヒュッテ・オリジナル「SeaQ1969」予価¥1,020,000 <ケース径39.5mm、SS、自動巻き、ラバーストラップ>(世界限定69本)2019年秋発売予定 グラスヒュッテ・オリジナル ブティック銀座 TEL. 03(6254)7266 COURTESY OF GLASHÜTTE ORIGINAL

グラスヒュッテ・オリジナル「SeaQ1969」予価¥1,020,000
<ケース径39.5mm、SS、自動巻き、ラバーストラップ>(世界限定69本)2019年秋発売予定
グラスヒュッテ・オリジナル ブティック銀座
TEL. 03(6254)7266
COURTESY OF GLASHÜTTE ORIGINAL

 前出のフィフティ ファゾムスも含め、ヴィンテージなダイバーズウォッチは、スーツにもカジュアルにも合わせられるオールマイティな1本。しかも防水性に加えて耐衝撃性も高く、ドレスウォッチよりラフに扱える。海中で見やすいダイヤルは、陸上でも健在。少し視線をやるだけで、時間が読み取れる。潜水士のために開発されたダイバーズウォッチは、普段使いとしても極めて実用性が高い。加えてスポーティな外観は、男性はもちろん、女性にも颯爽とした印象を与えてくれる。

 オメガの「シーマスター プラネットオーシャン マスター クロノメーター」は、ジェンダーレスな時代にふさわしい新作ダイバーズウォッチだ。頑強な600m防水はそのままに、ベゼルを鮮やかなオレンジ色に染め上げた。その素材は傷が付かないセラミック製。さらに医療用のMRIに匹敵する15,000ガウスの超高耐磁仕様でもある。スマホのスピーカーやハンドバックの留め金など、強力な磁石が至る所にある今の時代には頼もしい。

画像: オメガ「シーマスター プラネットオーシャン マスター クロノメーター」¥700,000 <43.5mm/SS、自動巻き、SSブレスレット>2019年10月発売予定 オメガお客様センター TEL. 03(5952)4400 COURETSY OF OMEGA

オメガ「シーマスター プラネットオーシャン マスター クロノメーター」¥700,000
<43.5mm/SS、自動巻き、SSブレスレット>2019年10月発売予定
オメガお客様センター
TEL. 03(5952)4400
COURETSY OF OMEGA

 これら3つの新作ダイバーズウォッチは、恒例の時計・宝飾見本市バーゼル・ワールドで発表された…… のでは、ない。3ブランドを傘下に収めるスウォッチグループは、今年からバーゼル出展を取りやめた。そして同じくグループ傘下のブレゲ、ハリー・ウィンストン、ジャケ・ドローの6ブランドで、「TIME TO MOVE」と名付けた、独自の新作時計発表会を5月14~16日の間、スイスで開催したのだ。

招待した約200名のメディア関係者に、1日2ブランドが順に新作を披露。発表会場は、ドイツを拠点とするグラスヒュッテ・オリジナルはジュネーブのホテルで、それ以外の5ブランドはそれぞれの本社で行い、単に新作を見せるだけに留まらず、それらが作られる様子まで開示して、より密なコミュニケーションが図られた。スウォッチグループ以外にも今年からバーゼル出展をやめたブランドは数多い。

 そして来年以降、それに続くブランドが登場してもいる。100年を超える歴史を持つ新作時計発表会のあり方が、まさに変わろうとしている。しかし、それが新作に悪影響を与えることなど、むろんない。今回紹介した3作は、いずれも力作揃い。変化の時代にこそ、傑作は生まれる。

高木教雄(NORIO TAKAGI)
ウォッチジャーナリスト。1962年愛知県生まれ。時計を中心に建築やインテリア、テーブルウェアなどライフスタイルプロダクトを取材対象に、各誌で執筆。スイスの新作時計発表会の取材は、1999年から続ける。著書に『「世界一」美しい、キッチンツール』(世界文化社刊)があり、時計師フランソワ・ポール・ジュルヌ著『偏屈のすすめ』(幻冬舎刊)も監修

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