BY NORIO TAKAGI
海中を魚のように自由に泳ぎ回りたい――そんな夢が現実のものとなったのは、1943年のこと。この年、呼吸ガスを携行できる潜水器具=スクーバが実用化されたのだ。その発明者の一人が、ジャック=イヴ・クストーである。海の恋人と呼ばれるフランスの海洋学者であり、今あるスクーバダイビングのいわば生みの親。映画ファンなら、深海の世界を世に伝えたドキュメンタリー「沈黙の世界」(1956年)でその名を知る人も多いだろう。
その撮影中、彼の腕には、当時まだ珍しかったダイバーズウォッチがあった。ブランパンの「フィフティ ファゾムス」である。誕生は、1953年。防水性に優れ、海中でも見やすく、ロック機構が付いた回転ベゼルで潜水時間が計れる。これら現代のダイバーズウォッチ共通のスタイルは、フィフティ ファゾムスによって確立された。同モデルが、“モダン・ダイバーズウォッチの始祖”と呼ばれる、これがゆえん。その優秀さはフランス海軍潜水部隊にも認められ、誕生の年、同部隊の装備品として正式採用されている。

ブランパン「フィフティ ファゾムス オートマティック “フロッグマン”」¥1,520,000
<ケース径45mm、SS、自動巻き、セイルキャンバスストラップ>(限定300本)
ブランパン ブティック銀座
TEL. 03(6254)7233
COURTESY OF BLANCPAIN
ブランパンは今年、そんな史実にスポットライトを当てた。「フィフティ ファゾムス オートマティック “フロッグマン”」は、フランス海軍潜水部隊へのトリビュートとしてつくられた新作だ。その外観は、装備品であった初代の姿をほぼなぞらえ、裏蓋には同部隊の記章がエングレービングされている。そしてダイヤルの6時位置には、純酸素のボンベで潜水できる最大深度の7mに因み、その数字を浮かばせた。