BY MICHINO OGURA
ファーフェッチが擁する最先端のテクノロジーと歴史あるハイエンドなブランドが手を組んだら、どんな化学反応が起こるのか、その一例をネヴェス氏は教えてくれた。
「2018年2月にシャネルとイノベーションパートナーシップを組み、そのプロジェクトがこの7月にローンチされました。私たちは、パリのカンボン通りにあるシャネルの新しい旗艦店のために、ロイヤルクライアント(顧客)とファッションアドバイザー向けのアプリとシステムを開発しました。ロイヤルクライアントの方が、「ウィッシュリスト」上に気になるアイテムを保存すると、次回の来店時に担当のファッションアドバイザーがそのアイテムを用意してご案内するなど、よりパーソナルな接客や、ブランド体験へつながるサービスです。シャネルからも、すでにご利用いただいているロイヤルクライアントからも高い評価を得ています」
ショッピングのパーソナライズ化、そしてアミューズメントパーク化ともいえる試みを通して、ネヴェス氏が伝えたいことは、とてもシンプルな言葉だった。
「For The Love of Fashion が僕のモットー。22歳からずっとファッションに携わってきましたから。同時に、8歳からテクノロジーにも魅了されていて、どうすればデザイナーの作品をグローバルな顧客に届け、彼らの産業の手助けができるかということも考えていたんです。そこで、ファッションのためのプラットフォームを作り、そこにハイエンドかつ、伝統的なブランドを迎えることに成功しました」
ファーフェッチではスマホひとつで、世界中のファッションマーケットを旅するように買い物ができる。そして実店舗での新たな試みも実を結びつつある。だが、ネヴェス氏はその先にある未来も見据えている。
「さっき、僕のことを“天才”と言ってくれましたが、OFF-WHITEのヴァージル(・アブロー)もまさしく“天才”です。Netixがオリジナルコンテンツに多額の投資をするように、ファーフェッチも若い"天才"たちと組むことによって、新しいコミュニティづくりをしようとしています。彼らのようにユニークなビジョンをもっている人たちと、僕らのテクノロジーを共有したいと思っているんです」
ECの台頭やデジタルメディアの発展で、消費者がどのようにインスピレーションを得て、服を購入するのか、その行動が急速に変化している現在、ブランドやデザイナー側も、自分たちのクリエイティブなビジョンをどう実現するか模索している。ファーフェッチが考えるフィジカルとテクノロジーの融合が、その懸け橋となっていくのかもしれない。