BY KIMIKO ANZAI, PHOTOGRAPHS BY TOMOKO SHIMABUKURO
ワイン愛好家にとって、“飲んだだけで話題になるシャンパーニュ”が「サロン」だ。きらめく酸としなやかなミネラル、熟成からくる繊細な果実味は、心に華やかな余韻を残す。
サロンは、パリの毛皮商ユジェーヌ・エメ・サロンが趣味で造っていたものが当時の上流階級の間で話題となり、1914年に設立されたメゾン。“単一品種(シャルドネ)、単一村、単一ヴィンテージ”にこだわり、シャルドネの最高峰とされるコート・デ・ブラン地区メニル・シュル・オジェ村のブドウのみを使用している。ブドウの作柄が極めてよい年にしか造られず、この100年の間に誕生したのは、わずか37ヴィンテージ。“幻のシャンパーニュ”と呼ばれるゆえんでもある。
一方、サロンが造られない年に、通常使用するブドウに、サロン用のシャルドネを加えて造られるのが、「ドゥラモット」だ。サロンほど値が張らないのに極めて美味なことから、愛好家には“サロンの妹”と親しまれているが、ドゥラモットは、いわゆるサロンのセカンドではない。1760年、ランスに設立された老舗メゾンとして、また異なる魅力を放つ“綺羅星の中の1本”なのだ。
ドゥラモットは通に人気のシャンパーニュで、こちらも、シャルドネはコート・デ・ブラン地区のものを使用している。「ドゥラモット ブリュット NV」、「ドゥラモット ブラン・ド・ブラン」といったすべてのラインにおいてコート・デ・ブランらしい厚みのあるミネラルが感じられる。ブーケのような華やかな香りは、ドゥラモットならではの魅力だ。
サロン、ドゥラモットの代表取締役社長であり、最高醸造責任者でもあるディディエ・ドゥポンはこう語る。
「サロンとドゥラモットは、ひと言でいえばまったく違う個性をもつ姉妹といったところでしょうか。ドゥラモットは“サロンの妹”と評されますが、私から見れば“サロンの姉”。なぜなら、ドゥラモットのほうがメゾンの歴史は長いのですから(笑)。加えて、ドゥラモットには、コート・デ・ブランらしいしなやかなミネラルと酸の美しさがよりやわらかに表現されています。優し気なニュアンスも“姉”らしいといえるでしょう」
確かに、本来の真価を発揮するまでに長い熟成の時を待たなくてはならないサロンに対し、4~5年の熟成でより親しみやすく、料理にもすっと寄り添ってくれるドゥラモットは、まさに“姉”のようなイメージ。サロンが“芸術家肌の妹”なら、ドゥラモットは“優等生タイプの姉”といった趣だ。
「また、サロンとドゥラモットは、互いに補完する関係であるように思えます。サロンが綺羅星のような存在なら、ドゥラモットはもう少し私たちに近いところで、優しい輝きを発する星。けれど、互いがコート・デ・ブランの最高峰のシャルドネという絆で繋がれ、光を与えあっている。それが、ファンにとっては姉妹のように思えるのかもしれません」
サロンもドゥラモットも、シャルドネの、そしてコート・デ・ブランの個性をそれぞれのスタイルで優雅に表現している。その個々の魅力の違いを知って楽しんでもらうことが、ディディエにとっての喜びなのだという。
「シャンパーニュは幸福のワインです。淡いゴールドの泡が立ちあがるのを見るだけでも心が躍り、笑顔になる。サロンもドゥラモットも、そんな幸福のワインでありたいと、私たちは願っているのです」
問い合わせ先
ラック・コーポレーション
TEL. 03(3586)7501
Champagne SALON
Champagne DELAMOTTE