BY YUKINO HIROSAWA, PHOTOGRAPHS BY TAKASHI EHARA
つぶらな瞳の犬や猫、野性味と愛嬌が共存する馬や鹿。のびやかなタッチで温かなエネルギーを放つ作品や、さまざまな技法をレイヤーさせた独自のアートで人々を魅了するイラストレーターの真鍋太郎さん。東京で生まれ、少年期を四国と九州で過ごしたという。
「少年時代は、海が近くて繁華街もあり、すぐそばに山があるような、とても自然豊かな環境で育ちました。当時は甘党ではなかったけど、大地の恵みがぎゅっと詰まった果物が好きで。果物を使ったおやつに今も惹かれるのは、そのせいかもしれないね」
そんな真鍋さんのお気に入りのカフェのひとつが、富ヶ谷にあるチョコレート専門店「テオブロマ」。「新聞を読みながら紅茶を飲むつもりで行くんだけど、気づけば店主で日本を代表するショコラティエの土屋さんとおしゃべり(笑)。そんなご近所カフェなんだけど、オレンジの皮をチョコレートでコーティングしたオランジェットが好きだね。あれ!? これもやっぱり果物だ(笑)」
立教高校からは東京に移り、同大学の経済学部へと進学。「親父が画家だったからか、逆にエリートサラリーマンになって人生をスイスイ渡りたいと思っていたんだけれど、当時は学園闘争まっただ中。『既成の大きな組織に組み込まれるのは、かっこ悪い』なんて思っちゃって。そのうち学校の試験も追試、追試の繰り返しで人生崖っぷちに(苦笑)。今思うと、ギリギリまで追い込まれたおかげで、“自分が本当に好きなものは何なのか?”がくっきり見えてしまってね」。悩んだ末に、意を決して、グラフィックの枠を超えてマスメディアのスーパースターだった、憧れの黒田征太郎氏のオフィス、K2の門をたたいたそう。「その師匠が、無類の酒好き。下戸だった僕も鍛えられ、お酒もバーの雰囲気も好きになって。当時は甘党=軟弱っていうイメージも強かったから、余計に甘いものから遠ざかっちゃったね」