BY YUKIKO HIRANO
山菜の中でも特に早く出回るのがふきのとう。冬の寒さを乗り越えて芽吹く生命力を持ち、春がやってきたことを告げてくれる。特有の強いえぐみや苦味があるが、この味わいこそが酒の肴として、魅力を放つ。「山菜のほろ苦さはポリフェノール。山菜の天ぷらとワインは定番と言っていいほど、よく合う組み合わせです。中でも私のおすすめはオーストリアのグリューナ・ヴェルトリーナー。野菜料理、和食に合う代表的なワインですが、今回のワインは複雑なほろ苦味と旨味を持っています。一緒に口に含んでみると、ビターなオレンジマーマレードを思わせるような風味が膨らみ、口の中に心地よい余韻が流れます。『春の皿には苦味を盛れ』と言いますが、その苦味をより魅力的にしてくれるのがワインです」(平野さん)
レシピ1:ふきのとうとハマグリのアヒージョ
オイルで煮るだけのシンプルレシピ。ハマグリがぷっくりとして開いた頃にふきのとうにも火が通り、食べごろに。早春の日本だからこそ味わえるアヒージョだ。
<材料 2人分>
ふきのとう小6個、ハマグリ6〜8個、オリーブオイル100ml、にんにく1/2かけ、赤唐辛子1本、塩少々、バゲット薄切り適量
<作り方>
1 ふきのとうは黒くなっているところがあれば取り除く。大きいものは半分に切る。はまぐりは塩水につけて砂抜きをし後、水気を拭いておく。
2 にんにくは薄切りにして、芽を竹串などで取る。赤唐辛子は半分に切る。
3 オリーブオイルに2を入れて弱火でゆっくりと加熱をする。
4 香りが出てきたら、1を加えて弱火で時々返しながら煮る。
5 はまぐりの口が開いたら、味を見て塩で調味する。バゲットなどを添える。
レシピ2:ふきのとうの醤油漬け
さっとゆでて、醤油とみりんに漬けるだけ。甘過ぎず、ふきのとうの風味がそのまま味わえる。これさえあれば酒が進むが、調味料としても万能。
<材料 作りやすい分量>
ふきのとう80g、醤油大さじ4、みりん大さじ2
<作り方>
1 みりんを加熱してアルコールを飛ばす。醤油を加えて、保存容器に入れて粗熱をとる。
2 ふきのとうは黒くなっているところがあれば取り除く。湯を沸騰させて、塩少々を加えて、ふきのとうを入れてや約1分ゆでて冷水にとる。
3 水気を拭き、ざく切りにする。絞ってしっかりと水気を切る。
4 1に3を加えて漬ける。3〜4時間以上漬けてからが食べ頃。
【今月のお酒セレクト:ヨハネス・ツィリンガー/ヌーメン グリューナー・ヴェルトリーナー 2018】
オーストリアを代表する品種、グリューナー・ヴェルトリーナーはレモンや白こしょうの風味のするすっきりタイプのワインだが、500Lのアンフォラで20ヶ月熟成させることで、黄色い果実、果皮の苦味を感じる複雑な味わいに。「強いオレンジワインではなく、繊細でいて、心地よいタンニンを持っています。ハーブやレモンの風味で合わせるのではなく、苦味や複雑味の調和で選びました。口に含むと、さまざまな要素が口の中で溶け合い、広がっていきます。グリューナー・ヴェルトリーナーの新たな魅力に出会えるワインです」(平野さん)
平野由希子
素材を生かしたシンプルでおいしい料理に定評のある料理家。書籍や雑誌、広告で活躍するかたわら飲食店のプロデュースや商品開発も手がける。日本ソムリエ協会認定ソムリエで、ワインバー「8huit.」のオーナーでもある。ワインと料理のペアリングが楽しめる料理教室も主宰。公式サイトはこちら