季節の野菜が持つ本来の美味しさを引き出すことを知り尽くしている料理家・平野由希子さんが、いま食べたい野菜で作る魅惑のお料理と、相性のよいお酒のペアリングを、時代のトレンドに合わせた視点で提案。連載第25回は、絶妙なほろ苦さで山菜の王様と呼ばれる春の味覚、たらの芽をロゼワインで楽しむ!

BY YUKIKO HIRANO

画像: 山菜の王様「たらの芽」をロゼワインと共に

山菜の王様「たらの芽」をロゼワインと共に

 春の光がきらめくようになる頃。店先には山菜が並び始める。たらの芽が山菜の王様と呼ばれるのは、その食味の良さからだ。繊細な苦味と香り、ほっくりとした食感はシンプルに料理するだけで、存在感のある春のごちそうとなる。「やっぱり揚げ物は外せないですね。誰でも失敗なくカリッと揚がる衣のレシピでご紹介します。たらの芽はアクの強くない山菜なので、ワインを合わせるのなら、繊細なタンニンのものがいい。ニュージーランドのナチュラルなロゼワインを選びました。ワイン業界の有名人、藤巻一臣さんとNZの醸造家アレックス・クレイグヘッドによる新ブランド。びっくりするワイン名ですが、ピュアで美しい味わいのワインです」(平野さん)。

レシピ1:たらの芽のフリット

 さくっと軽い食感の衣に包まれたたらの芽はほっくりと香り豊か。塩とワインでいただく春の味。 

画像: 春の苦味には、心地よいポリフェノールを感じるワインがいい

春の苦味には、心地よいポリフェノールを感じるワインがいい

<材料 2人分>
たらの芽8個、薄力粉大さじ2、オリーブオイル大さじ1、水30〜40ml、揚げ油適量

<作り方>
 たらの芽の根元のはかまと言われる茶色い部分を手でむく。
 ボウルに薄力粉とオリーブオイルを加え混ぜてから、水を加えてさらに混ぜる。
 たらの芽を衣のボウルの中に入れて衣をまとわせる。薄くなるように余分な衣は落とす。
 油を170〜180度に熱し、3を加えて揚げる。1分半程度が目安。塩を添えていただく。

画像: 衣は薄力粉にオリーブオイルを加えて混ぜる。オイルがグルテンの生成を妨げ、カリッと仕上がる

衣は薄力粉にオリーブオイルを加えて混ぜる。オイルがグルテンの生成を妨げ、カリッと仕上がる

レシピ2:たらの芽とアンチョビベーコンのスパゲッティ

苦味、塩味、燻製香をひと皿で味わうことができるパスタ。たらの芽とオリーブオイルの相性は抜群。

画像: ベーコンのほどよい塩味が絶妙で、食べはじめると止まらない一皿

ベーコンのほどよい塩味が絶妙で、食べはじめると止まらない一皿

<材料 2人分>
たらの芽6〜8個、スパゲッティ160g、アンチョビ4枚(粗みじん切り)、ベーコン2枚(1センチ幅に切る)、にんにく2片(みじん切り)、赤唐辛子2本(半分に切って種をとる)、オリーブオイル大さじ2、塩適量

<作り方>
 たらの芽のはかまを取り、大きいものは縦半分に切る。スパゲッティは塩適量を加えた湯でゆでる。
フライパンにオリーブオイル、にんにく、赤唐辛子を入れて熱し、香りが立ってきたら、ベーコン、たらの芽を加えて炒める。2分ほど炒めてたらの芽に火が通ったら、アンチョビを加えてさらに炒める。
 ゆで上がったスパゲッティを加え、オリーブオイル、ゆで汁適量、塩で味を調える。

【今月のお酒セレクト:OJISAN ROSE 2022】

画像: PHOTOGRAPHS: COURTESY OF YUKIKO HIRANO

PHOTOGRAPHS: COURTESY OF YUKIKO HIRANO

 ワインの名は時を経て、二人の醸造家がOJISANになったことから、つけられた。藤巻さんはイタリアンレストランのゼネラルマネージャーを経て、50代に差し掛かった頃に醸造家に転身、世界中でワインを手がける。90%のメルローにピノ・グリ、ゲヴェルツトラミネールを加えた非凡なロゼワインだ。「心地よく、きめの細かな味わいは食材にすっと染み込むよう。こういうワインを合わせると、料理のおいしさも伸びやかに感じられます。エスニック料理などに合わせるのもいいですね」(平野さん)。

ずっと身近に置きたい一冊──平野由希子さんの新著が発売!

 平野さんが、これまでの書籍では伝えきれなかった料理の原点をまとめた新著『ma cuisine おいしさの引き出し方』が好評発売中。「春夏秋冬野菜のことを思い続けている」「肉料理はつくれば作るほど、上手くなる」といった心に響く言葉とともに、野菜料理、肉料理、揚げ物、魚料理など約70品がずらり。家庭のキッチンでとびきりおいしく作るコツ、さらに調理のしやすさも追求した極上のレシピは、時代の流行に左右されない一生もの。まるで食材とお料理へのラブレターのような、ずっと身近に置いておきたい一冊だ。

画像: 「家でつくるからこそ、おいしいラタトゥイユをつくろう」と思い立って平野さんが追求してきた一品。美しい写真の数々にも五感が研ぎ澄まされる 撮影/ローラン麻奈

「家でつくるからこそ、おいしいラタトゥイユをつくろう」と思い立って平野さんが追求してきた一品。美しい写真の数々にも五感が研ぎ澄まされる

撮影/ローラン麻奈

画像: 驚くほどジューシーに焼き上げるコツとともに紹介される「鶏もも肉のポワレ」。見ているだけでも幸せな気分に! 撮影/ローラン麻奈

驚くほどジューシーに焼き上げるコツとともに紹介される「鶏もも肉のポワレ」。見ているだけでも幸せな気分に!

撮影/ローラン麻奈

画像: 『ma cuisine おいしさの引き出し方』 著者:平野由希子 判型:B5変形判・240ページ 価格:¥4,180 発行:誠文堂新光社

『ma cuisine おいしさの引き出し方』

著者:平野由希子
判型:B5変形判・240ページ
価格:¥4,180
発行:誠文堂新光社

平野由希子
素材を生かしたシンプルでおいしい料理に定評のある料理家。書籍や雑誌、広告で活躍するかたわら飲食店のプロデュースや商品開発も手がける。日本ソムリエ協会認定ソムリエで、ワインと料理のペアリングが楽しめる料理教室も主宰。
公式サイトはこちら

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