京都⽣まれ、京都育ちの⾷いしん坊、京都でおいしいものに出合いたければ、この⼈に聞けばハズレなし!そんなアマジュンこと天野準⼦の絶品満腹⼝福アドレス。今⽉は「和食の新店」を紹介。第2弾は「近野」へ

TEXT & PHOTOGRAPHS BY JUNKO AMANO

祇園四条「近野」

画像: 店主・近野康弘さんと祇園甲部の芸妓だった女将の裕子さん

店主・近野康弘さんと祇園甲部の芸妓だった女将の裕子さん

 京阪「祇園四条」駅から徒歩7分。京都に5つある花街のひとつである宮川町に2025年4月にオープンした「近野」。
 店主・近野康弘さんは、祇園の[割烹 八寸]出身で、季節のうつろい映す八寸をはじめ、古巣仕込みの正統な会席料理をいただける。

画像: サワークリーム入りのさっぱりとしたごまあんをかけたイチジクの酒蒸しや実山椒タレでいただくハモフライ、和風パテなど、晩夏の八寸

サワークリーム入りのさっぱりとしたごまあんをかけたイチジクの酒蒸しや実山椒タレでいただくハモフライ、和風パテなど、晩夏の八寸

 東京や京都の料亭を経て、[割烹 八寸]でみっちり6年研鑽を積んだ近野さん。もうすでに日本料理のキャリアは十分にあるが、当時32歳という若さもあり、その後5年は「アマン京都」をはじめ、いくつかのホテルに勤務したという。
「ていねいな仕事がされたクラシックな料理が好きですが、[割烹 八寸]の親方から『まだまだ若いのだから若いなりの思い切った料理をしなさい』というアドバイスを受け、心がけるようにしています」と、近野さん。
 その言葉通り、近野さんの作る料理は、正統派ながら無難に終わらず、新しさや創意工夫を感じるものに。

画像: 古巣[割烹 八寸]の名物でもある長芋そうめん。糸のように細く切った長芋を昆布締めに。キーンッと冷えた出汁をはり、そうめんのようにすすっていただく

古巣[割烹 八寸]の名物でもある長芋そうめん。糸のように細く切った長芋を昆布締めに。キーンッと冷えた出汁をはり、そうめんのようにすすっていただく

 例えば、夜のコースに必ず登場する牛肉の炭火焼きは、通常はわさびや塩でいただくことが多いが、大原の野草を出汁と合わせた餡と共に出される。野草はそのまま食べると苦みやえぐみを感じるものもあるが、火を入れて出汁と合わせると、牛肉をあっさりいただけるちょうどいい味わいに。

画像: 経産和牛ヒレの炭火焼き・山野草餡。この日はハコベやチメドクサ、カキドオシなどを使用

経産和牛ヒレの炭火焼き・山野草餡。この日はハコベやチメドクサ、カキドオシなどを使用

 コースの最後に登場する水物も、「フルーツだけでは味気ないですが、食後に菓子を出すのも重たいし・・・」と、常時10種類以上のフルーツを用意し、盛り合わせで提供。懐石の最後に昔から出されているフルーツも、自ら選ぶというスタイルで高揚感をかき立てる。

画像: 好きなフルーツを選ぶと、目の前でカットし、盛り合わせてもらえる。上にかかった甘いワインのジュレもフルーツの名脇役

好きなフルーツを選ぶと、目の前でカットし、盛り合わせてもらえる。上にかかった甘いワインのジュレもフルーツの名脇役

 近野さんは、今から13年前、24歳でソムリエ資格を取得し、ワインとのペアリングも推奨。酸化することなくいつまでもワイン本来の味を楽しめるコラヴァンと呼ばれるワインツールを使用しているため、グラスワインも豊富に用意されている。シャンパーニュもマグナムサイズで常時3種類から選べ、最後のフルーツ盛り合わせと共に〆シャンする人も多いという。

画像: シャンパーニュはリシャールをはじめ、常時マグナムボトルで用意。「同じ銘柄でもマグナムボトルは熟成がゆっくり均一に進むため、奥行きのある味わいになります」

シャンパーニュはリシャールをはじめ、常時マグナムボトルで用意。「同じ銘柄でもマグナムボトルは熟成がゆっくり均一に進むため、奥行きのある味わいになります」

 夜のコースは一斉スタートで、午後6時からに加え、午後9時からいただけるのも希少。花街という場所柄、芸舞妓や置屋の女将さんのため、午後9時からはアラカルトも注文でき、新幹線で遅めに京都に着いた日から京都の食を堪能できる。
 さらに「店を始めたばかりなので、いろんな方に店のことを知ってほしくて」と、ランチ営業まで行っていて(数ヶ月後にはやっていないかも。そして、すごいお値打ち)、いつ休んでるんですか?と思うほど。
 最近は、豪華食材づくしのコースや奇をてらった料理を出す和食店も増えているが、正統にして印象深く、上品だ。

画像: 懐石料理のメインディッシュと呼ばれる椀物。最上級の利尻昆布や本枯れ節を使い、味付けはほんの数滴の醤油のみ。吸地の澄み切った味わいにふわふわのハモがホロリ。松茸と出汁が織りなすハーモニーに感動

懐石料理のメインディッシュと呼ばれる椀物。最上級の利尻昆布や本枯れ節を使い、味付けはほんの数滴の醤油のみ。吸地の澄み切った味わいにふわふわのハモがホロリ。松茸と出汁が織りなすハーモニーに感動

「近野」
住所:京都市東山区大和大路松原下ル弓矢町38
営業時間:12:00〜、18:00〜、21:00〜すべて一斉スタート
21:00以降はアラカルト注文可〜22:30LO
定休日:月曜・火曜昼
料金:コース・昼 ¥11,000、夜¥25,000(ともに別途サービス料)
TEL. 050-1722-4531
公式インスタグラムはこちら

画像: 天野準子 生まれてこの方、碁盤の目と呼ばれる京都の街中暮らし。雑誌やWEBで京都にまつわるライティングやコーディネートを行っている。プライベートでは、強靱な胃袋を武器に日々、おいしいものをハント

天野準子
生まれてこの方、碁盤の目と呼ばれる京都の街中暮らし。雑誌やWEBで京都にまつわるライティングやコーディネートを行っている。プライベートでは、強靱な胃袋を武器に日々、おいしいものをハント

京都人・天野準子の「これ、おいしいから食べよし」記事一覧へ

▼あわせて読みたいおすすめ記事

T JAPAN LINE@友だち募集中!
おすすめ情報をお届け

友だち追加
 

LATEST

This article is a sponsored article by
''.