BY KYOKO HIRAKU
ヌード、男装の麗人、男と女が織りなす背徳のワンシーン。ヘルムート・ニュートンは2004年に84歳で亡くなるまで、生涯一貫してヨーロッパ的な頽廃の薫りのする世界を撮り続けたファッションフォトグラファーだ。本作は、ニュートンの生誕100年を記念して今年製作されたドキュメンタリー作品。主に1970~80年代に彼の被写体となった女優やスーパーモデルなど、ニュートンをインスパイアした12人の女性たちが撮影の内幕と、ニュートンという写真家がどんな人物だったかを赤裸々に語ってくれる。
彼の写真の中で全裸をさらけ出している女優のシャーロット・ランプリングはニュートンとの共同作業を誇り高く振り返り、娼婦に扮したイザベラ・ロッセリーニは「男性優位の文化を暴くニュートンの写真は面白い」と分析し、余裕をみせる。ドイツ表現主義の影響を指摘するのは、60年代にミック・ジャガーの恋人だったマリアンヌ・フェイスフル。映画の後半では、ベルリン生まれのニュートンの軌跡をたどり、長年連れ添った妻のジューンの存在がどれほど大きかったかがプライベートな映像とともに明かされていく。
彼自身は作品のイメージとは異なり、いたずらっ子のような大人だったのは意外な発見。彼のスキャンダラスな作品を今、改めて見るとどう感じるか。自分の価値観を再認識する機会としても興味深い映画だ。
『ヘルムート・ニュートンと12人の女たち』
12月11日(金)よりBunkamura ル・シネマ、新宿ピカデリーほか全国順次公開
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