BY KYOKO SEKINE
春から続くコロナ禍の中、東京では新規ホテルの開業が相次いでいる。もともと今年の東京オリンピック・パラリンピック開催の予定を見込んだ“おもてなし”作戦の一環として、また海外からの観光客来日による圧倒的な宿泊施設不足の解消のため、開業を目指していたホテルが多くある。しかし、世界的な感染症拡大による五輪延期に対し、東京はただ路頭に迷うわけにはいかない。未来を見据え、東京のホテルが力強く闊歩し始めているのを見るにつけ、大きな声援を送りたいと思うのは当然だろう。
2020年9月1日、東京・大手町に華々しく誕生した「フォーシーズンズホテル東京大手町」は、丸の内、京都に次ぐ日本で3軒目となるフォーシーズンズホテルである。その歴史は、カナダのトロントに本部を置くラグジュアリーホテルチェーン、「フォーシーズンズ&リゾーツ」に始まった。第1号のホテルオープン以来、まもなく創業60周年を迎える。今では誰もが知るグローバル企業として世界中を網羅し、幅広い固定ファン層がブランドを支えている。今回、東京のビジネス中心地である大手町に生まれたことで、フォーシーズンズの名がより知られることとなろう。
ホテルは、大手町ワンタワーと三井物産ビルからなる、大型複合ビル「大手町ワン」のハイライト的な存在として誕生している。ビルの34階~39階を占有し、客室総数は190室が用意された。窓からは皇居御苑の緑が一望でき、さらに東京のスカイラインを堪能できるパノラマビューがなんとも都心のホテルらしい。客室内は全体的に淡い色調の上品な部屋作りが特徴的だ。それぞれに窓が大きく採られ、明るく広々としたスペースの客室はいずれも快適である。
最上39階からは、前述のように東京の全貌が楽しめる。改めて「東京は、なんと緑の多い街なのだろう」と気づかされる人も多いことだろう。好天ならばくっきりとその姿を現す富士山も遠望でき感動的だ。
高級感漂うレセプションエリアや客室のデザインは、アジア発祥のラグジュアリーリゾート「AMAN」などを手掛けたことでも知られるデザイナー、ジャン・ミシェル・ギャシー氏率いる「デニストン」が担当している。ギャシー氏の独特な感性によるモダニズムは、このフォーシーズンズホテルのレセプションエリアにも表現されており、ダイナミックなデザインながら、同時に、いかにもフォーシーズンズらしいエレガンスを漂わせているのが印象的だ。
同じく39階のレストランエリアでは、世界中の高級ホテルでダイニングやラウンジなどを手掛けてきた「デザインスタジオ・スピン」が、独特な高級感とカジュアルな空気感をミックスさせ、訪れるゲストがリラックスして食事を楽しめるよう個性的な空間を演出。ライブ感あふれる4つのオープンキッチンを備えたイタリアンダイニング「PIGNETO(ピニェート)」は、本格的な窯焼きピッツァなどが味わえるメニューも含み、開業日以来、ゲストの絶える間がないほどに賑わっている。そのコンセプトは、食の重要性を説くイタリア料理らしい“アボンダンツァ”(豊潤な人生)を掲げている。
他にも、ミシュランの星に輝くシェフ、ギヨーム・ブラカヴァル氏が手掛けるコンテンポラリーフレンチ「est(エスト)」、そしてオリジナルカクテルが人気のバー「VIRTÙ(ヴェルテュ)」などがそろい踏みだ。
スパ&フィットネスエリアも充実している。仕事にも、プライベートにも真摯に取り組み、多忙で遊ぶ余裕などない日々を送る大人達へ―― ときには、こうしたラグジュアリーな空間で過ごす“贅沢&非日常の時間”を手に入れて一歩立ち止まり、深呼吸をしてみてはいかがだろう。
フォーシーズンズホテル東京大手町
(FOUR SEASONS HOTEL TOKYO AT OTEMACHI)
住所:東京都千代田区大手町1-2-1
電話:03(6810)0600
客室数:全190室(内 スイート20室)
料金:約¥60,000~(1泊1室の室料。消費税・サービス料別)
※ 「Go To トラベルキャンペーン」などを利用する場合の参考料金。料金は宿泊日により変動
公式サイト
せきね きょうこ
ホテルジャーナリスト。フランスで19世紀教会建築美術史を専攻した後、スイスの山岳リゾート地で観光案内所に勤務。在職中に住居として4ツ星ホテル生活を経験。以来、ホテルの表裏一体の面白さに魅了され、フリー仏語通訳を経て、94年からジャーナリズムの世界へ。「ホテルマン、環境問題、スパ」の3テーマを中心に、世界各国でホテル、リゾート、旅館、および関係者へのインタビューや取材にあたり、ホテル、スパなどの世界会議にも数多く招かれている。雑誌や新聞などで多数連載を持つかたわら、近年はビジネスホテルのプロデュースや旅館のアドバイザー、ホテルのコンサルタントなどにも活動の場を広げている
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