COURTESY OF HOLLAND FESTIVAL

 国際的な舞台芸術のフェスティバルとしてよく耳にするのは、南仏プロバンスのアヴィニョン演劇祭や、スコットランドのエディンバラ国際フェスティバル、といったところだろうか。これらに比べると日本での知名度は低いけれど、アムステルダムで毎年6月に開催される「オランダ・フェスティバル」(今年は3日~25日)も、前二者同様、1947年から続く国際芸術祭の先駆け的存在で、世界有数の質と規模を誇っている。


特に、アムステルダムはいま世界中でもっとも注目されている演出家イヴォ・ヴァン・ホーヴェの本拠で、今回は彼の作品2本がプレミア上演されるのも大きな魅力だった。実際に訪れてみると、全体に思いのほか問題意識が高く、世界の動きにビビッドに反応した、メッセージ性の強いラインナップに力が注がれている。一週間滞在して次々と作品を観ていくにつれ、その重みが、ジャブのようにわが身に効いてくる感覚を味わった。



 ちょうど70周年を迎えた今年のテーマは、ずばり「デモクラシー」。この簡潔かつストレートな言葉の選び方に、フェスティバル主催者の強い危機感と切実な願望が透けて見える。セレクトされた作品のタイトルも、『デモクラシー・イン・アメリカ』、『マニフェスト』、『マイ・カントリー』、『ザ・ネイション』(Eric de vroedt演出/オランダ・ナショナル・シアター)など、偶然とは思えないほどの直球ぶりが目に付いた。




ロメオ・カステルッチ演出『デモクラシー・イン・アメリカ』

PHOTOGRAPH BY GUIDO MENCARI

 


『デモクラシー・イン・アメリカ』は、イタリアのビジュアル・アーティストで、今秋来日公演を控えるバイエルン国立歌劇場『タンホイザー』の演出も手がけたロメオ・カステルッチの作品。トランプ騒動をきっかけにアメリカの民主制について考え始めたというカステルッチは、19世紀フランスの政治思想家トクヴィルの古典的名著のタイトルを、この自作に付した。お揃いのミニスカにフラッグを持ったポップなチアリーダー風の女性たちの姿が、次第に開拓期の先住民やピューリタンの過酷な生活風景に転じ、魔女狩りの標的になりそうな、集団トランスの少女たちに重なってゆく。アメリカという国の世紀を遡り、その病根を見据えようとする発想とそのダイナミズムに戦慄した。