「マラケシュを訪れて、とてつもない衝撃を受けた」と語ったイヴ・サンローラン。

この写真は市内にある大広場、ジャマ・エル・フナで撮影された。

「この街は私に色彩を教えてくれた」

©REGINALD GRAY

 イヴ・サンローランには何人ものミューズがいたが、モロッコにあるマラケシュの街は彼にとって唯一無二の存在だった。彼はここで光と色に目覚め、ゆるやかな布のドレープと民族衣装のカフタンに出会った。マラケシュに彼の住まいは複数あったが、終(つい)の住みかであり、最もよく知られているのは、豪華なヴィラ・オアシスだ。サンローランはこの家で、彼のデザインの中でも最高傑作である何枚かのスケッチを描き、とびきり絢爛豪華なパーティを開いた。


 彼がモロッコを最初に訪れてから50年以上の歳月が流れた。そしてこの10月、彼のデザイナーとしての業績を讃え、最新設備を備えたファッション美術館が、ジャルダン・マジョレル庭園のすぐ近くにオープンする。ジャルダン・マジョレル庭園には彼のヴィラがあり、庭に鬱蒼と生い茂る植物は、砂漠と街の喧騒に疲れた観光客のオアシスとして人気を呼んでいる。新しい美術館は約3,995平方メートルの面積があり、その建物はパリを拠点とするスタジオKOがデザインした。館内には数千におよぶ衣装やオートクチュールのアクセサリーが所蔵される予定だ。そのすべてを注意深く選んだのが、サンローランの公私にわたる生涯のパートナーだったピエール・ベルジェだ。アイコンともいえるスモーキング・スーツやサファリジャケットなどはもちろんあるが、作品を網羅的に回顧する展示ではない(姉妹館となるパリのイヴ・サンローラン美術館が、サンローランのアトリエのあったマルソー通り5番地に、マラケシュの美術館よりも数週間先にオープンし、その役割を担うことになる)。



マラケシュのイヴ・サンローラン美術館。

最新設備を備えたこの美術館が讃えるのは、

デザイナーの業績と彼のデザインにモロッコが与えた影響だ。

美術館は人気のジャルダン・マジョレル庭園のすぐ近くにあり、10月19日にオープン。

パリを拠点とするスタジオKOにピエール・ベルジェがデザインを一任し、

現地の素材を使って20カ月という記録的なスピードで建てられた。

「デザイナーの業績とオートクチュールの分野に敬意を込めた建物だ」と

スタジオKOの共同創設者、オリヴィエ・マーティは言う

©NICOLAS MATHÉUS