今から90年前の1928年、東京芝浦に創業した「雅叙園」は、1931年、目黒の地に移転し開業に至った。かつて目黒雅叙園と呼ばれたこの絢爛たる館は、日本初の総合結婚式場として始まり、2017年4月に「ホテル雅叙園東京」としてリブランド・オープンを果たしている。



手入れの行き届いた表玄関へのアプローチ。
エントランスを入ると、想像をはるかに超えた雅びな世界が始まる



 エントランスを入って驚くのは、まず空間のゆとりと吹き抜けの天井、太陽光が燦燦と降り注ぐ明るく大きなガラス張りの造りである。螺鈿が施されたエレベーターや、センターエリアに設置されたエスカレーターが、バブル期の贅を映し出している。



艶やかな螺鈿のエレベーター。原図は橋本静水。
貝の内側の、虹色に輝く真珠層の光が神秘的



 しかし最も目を惹くのは、当時、あまたの芸術家に制作を依頼したという、廊下の壁を飾る木彫版の美人画や、格天井に描かれた絵画である。組子細工、蒔絵も無数にある。床以外、柱や壁など、目に入るところすべてが螺鈿や絵画で飾られた、重厚感のある和室宴会場やレストランの個室。今の時代ではどれほど投資しようと職人やアーティストが揃わないだろうと思われるほど、無数の美術品や工芸品が館内を彩っている。「目黒雅叙園の特徴は、派手さにある」(目黒雅叙園発行『時の流れ』より)と書にある通り、唯一無二、世界のどこにもない貴重な芸術品・美術品が詰まった館である。



ダイナミックな1階の回廊。

彩色彫刻と天井画は足を止めて思わず見入る豪華さ



 対照的なのは、昨年、ホテルとしてリニューアルがなされた宿泊スペースや客室だ。コンセプトは「和敬清心」。シンプル・エレガンスなスペースに高級感のあるマテリアルが使われ、すっきりと現代的な印象だ。全60室が最低でも80㎡以上と広く快適で、全室にジェットバス、サウナが備わっている。各部屋の大きな窓には、東京の中でも緑多き目黒地域ならではの景色が広がる。また、最上階に位置するエグゼクティブラウンジは、すべてのゲストが朝食からカクテルタイムまで利用することができる。



2017年3月に新設されたエグゼクティブラウンジ「桜花」。

朝食、ティータイム、フィンガーフードの充実した夕刻のトワイライトタイム、

バータイムなど、1日を通してくつろぎのひとときを提供する



雅叙園スイート「紅葉」(240㎡)のリビングエリア。

豪華なダイニングルームも圧巻



 メインダイニングは中国料理「旬遊紀」である。このホテル独自の理念である“食医同源”に基づき、健康的な食を目指し、東京発の滋味深い中国料理を謳っている。前述の通り「旬遊記」の個室内もまた華麗な装飾に満ち、まるで別世界へと入り込んだかのようである。



1階中国料理「旬遊記」内の個室「玉城の間」。

個室以外の店内はモダンチャイニーズの意匠。

料理は食べて元気になる「食医同源」をベースにしたモダンダイニング




 ホテル内でもうひとつ人気のレストランがRistorante「CANOVIANO」だ。白を基調にした現代的なインテリアの中で、日本の自然派イタリア料理の先駆者、植竹隆政シェフによる斬新なイタリア料理が提供されている。



自然派イタリアン「CANOVIANO」。店内66席、テラス席24席。
邸宅のような造りはウエディングにも大人気



「CANOVIANO」は上質で身体に優しい健康的な料理が評判。

植竹隆政シェフはオリーブオイルや野菜などの国産食材にもこだわる



 結婚式場としては華燭の典にふさわしい豪華な空間として、またホテルとしては現代的なモダニズムが活かされた高級感あふれる空間として。異なる時代の二面性が同居した「ホテル雅叙園東京」は、まさにミュージアムホテルと呼ぶにふさわしい。ホテル関係者は「今後、ヨーロッパを中心に海外プロモーションデビューしようと準備中」と語るが、世界的なホテルグループ「スモール・ラグジュアリーホテルズ・オブ・ザ・ワールド」(SLH)のメンバーであることも、その躍進を後押しすることだろう。





ホテル雅叙園東京(HOTEL GAJOEN TOKYO)


住所:東京都目黒区下目黒1-8-1

予約電話: 03(3491)4111

客室:全60室

料金:¥53,460~

(1泊1室2名のweb販売料金。サービス料・消費税込) 

 ※日によって料金が異なるため、要問合わせ

公式サイト




せきね きょうこ

ホテルジャーナリスト。フランスで19世紀教会建築美術史を専攻した後、スイスの山岳リゾート地で観光案内所に勤務。在職中に住居として4ツ星ホテル生活を経験。以来、“ホテル”の表裏一帯の面白さに魅了され、フリー仏語通訳を経て、94年からジャーナリズムの世界へ。「ホテルマン、環境問題、スパ」の3テーマを中心に、世界各国でホテル、リゾート、旅館、および   関係者へのインタビューや取材にあたり、ホテル、スパなどの世界会議にも数多く招かれている。雑誌や新聞などで多数連載を持つかたわら、近年はビジネスホテルのプロデュースや旅館のアドバイザー、ホテルのコンサルタントなどにも活動の場を広げている。www.kyokosekine.com




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