稀代の蒐集家ジャック・グランジ
その華麗なるコレクション人生

Jacques Grange’s Collection of a Lifetime, Now Up for Sale
イヴ・サン=ローランらの自宅も手がけたインテリアデザイナー、ジャック・グランジ。この11月、サザビーズは、彼が蒐集してきたアートや家具、骨董品にフォーカスしたオークションを開く

BY STEVEN KURUTZ, PHOTOGRAPHS BY ALEX CRETEY-SYSTERMANS, TRANSLATED BY G. KAZUO PEÑA(RENDEZVOUS)

画像: パレ・ロワイヤルの庭園を見渡すことのできる、パリ市内のジャック・グランジのアパルトマンの室内

パレ・ロワイヤルの庭園を見渡すことのできる、パリ市内のジャック・グランジのアパルトマンの室内

 ジャック・グランジは、73歳になる今年、自宅の整理をすることに決めた。フランス人で、半世紀にわたってインテリア・デザイナーとして活躍してきたグランジは、イヴ・サン=ローランやソフィア・コッポラ、モナコ公女のカロリーヌといった人々の自宅デザインを手がけてきた。それだけでなく、クライアントに入手すべき美術品や家具をアドバイスし、それらの調度品をさりげなくミックスした「オート・ボヘミアン」スタイルも指南してきた。グランジは、「洗練された人こそが認める、洗練された人物」とでもいうべき存在なのだ。

 サン=ローランと彼のパートナー、ピエール・ベルジェの素晴らしい美術品と家具の蒐集に力を貸してきたのもグランジだ。サン=ローランのコレクションは2009年、「世紀の売却」と銘打って、オークション会社クリスティーズ・フランス社で競売にかけられた。当然ながらオークションのあいだ、グランジはその目利き力を駆使して、モダンアートやコンテンポラリーアート、20世紀のデザインプロダクト、写真やアンティークを含む、世界に誇るべき彼のコレクションを増やしていった。それらの品物は、パレ・ロワイヤルの庭園を見渡すパリ市内のアパルトマンに、グランジらしい斬新な配置で並べ置かれている。ちなみにそのアパルトマンは、かつて作家のコレットが住んでいた場所だ。

 この11月、グランジは美術品コレクターたちに最高の瞬間を与えることになるだろう。21日と22日に競売会社サザビーズがパリで開催するオークションで、彼のコレクションのうち150点もの作品が出品されるのだ。ドナルド・ジャッドやアンリ・マティス、デイヴィッド・ホックニー、アイリーン・グレイ、アレクサンドル・ノルといったアーティストたちの作品に加え、おそらく目玉になるであろう、彫刻家のラランヌ夫妻による珍しい動物の彫刻作品も何点か競売にかけられる。フランソワ=グザヴィエ・ラランヌが手がけた、直立した白いダチョウ2羽からなる見事なバーテーブルもそのひとつだ。

画像: 当初、グランジはオークションを開くことに乗り気ではなかった。だが次第に熱が入り、競売に向けた一連の準備を一種のクリエイティブなプロジェクトとして取り組むようになった

当初、グランジはオークションを開くことに乗り気ではなかった。だが次第に熱が入り、競売に向けた一連の準備を一種のクリエイティブなプロジェクトとして取り組むようになった

 去る7月、アッパー・イースト・サイドにある高級ホテル、ザ・マーク・ホテルの中のマーク・バーでグランジに会った。モーニング・コーヒーを飲みながら、コレクションにまつわる逸話や、今回、それをオークションにかける理由などについて話を聞くことができた。グランジの長年のパートナーであるパリの骨董商、ピエール・パスボン(63歳)も一緒だった。彼らのクライアントは、アートやプロダクトを飾る自宅をいくつも所有していて、ジャン・ロワイエのソファのために5万ドルから何十万ドルまでポンと出せる余裕のある人たちばかりだ。この分野におけるグランジの影響力は絶大で、いま彼が座っているこの空間にも及んでいる。「ここ、ザ・マーク・ホテルの内装を手がけたのも私なんだ」とグランジ。このラグジュアリーなホテルが2007年に改装されたときに、空間デザインを手がけたのだ。

 つい最近、グランジは自分のアパルトマンを見回して、何か変化が必要だと確信した。「もう若くないからね」と、彼は説明する。「家に物が多すぎる。この機会に、生活に新しいエネルギーを取り入れるべきだって決心したんだ」

画像: オークションにかけられる作品のひとつ、フランソワ=グザヴィエ・ラランヌによる「ダチョウ・バー」

オークションにかけられる作品のひとつ、フランソワ=グザヴィエ・ラランヌによる「ダチョウ・バー」

 長年にわたってクライアントのためにバイイングしてきたこともあり、サザビーズとはかねてつながりがあった。家を少しだけ整理したいという要望を伝えると、サザビーズはグランジのコレクションのためだけのオークション開催を提案してきた。そして例のフランソワ=グザヴィエ・ラランヌがデザインした「ダチョウ・バー」をはじめとする、極めて貴重な品も手放してはどうかと薦めた。グランジは、当初は乗り気ではなかったものの、次第に熱が入り、競売に向けた一連の準備を一種のクリエイティブなプロジェクトとして取り組むようになった。

「オークションのカタログを作る作業は、とてもいい経験になった。自分がこれまで集めてきたコレクション、ひいては自分自身を視覚化して、それを一冊の本にするような作業だったから」とグランジは言う。

 

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