世界最大級のアートフェア「アート・バーゼル・マイアミ」をはじめ、さまざまな展覧会やイベントが開かれる、マイアミ・アート・ウィーク。注目すべき8つのトピックスを紹介

BY BENOÎT LOISEAU, TRANSLATED BY FUJIKO OKAMOTO

マニュエル・ソラーノの「記憶をたどる旅」

画像: マニュエル・ソラーノの《In the Metro, or She’s Not Pretty(地下鉄で、あるいは彼女はちっとも美しくない)》 2018年 COURTESY OF THE ARTIST AND PERES PROJECTS, BERLIN

マニュエル・ソラーノの《In the Metro, or She’s Not Pretty(地下鉄で、あるいは彼女はちっとも美しくない)》 2018年
COURTESY OF THE ARTIST AND PERES PROJECTS, BERLIN

 2018年のニュー・ミュージアム・トリエンナーレ展に、90年代のポップカルチャーに着想を得たすばらしい大型絵画を出展して注目を集めたメキシコのクィア・アーティスト、マニュエル・ソラーノ。リニューアルしたばかりのマイアミの現代美術館「ICA」では、彼ら(ソラーノは“彼ら”という代名詞を好む)の初の個展を開催した。

《I Don’t Wanna Wait for Our Lives to Be Over(命が尽きるのをただ待つのは嫌だ)》と名づけられたこの展覧会では、絵画や写真、映像、インスタレーションなど、さまざまな表現手法を駆使してアイデンティティや知覚というテーマを探求。ソラーノは、2014年にエイズの合併症で視力を失ってからは、記憶を形にすることが創作の中心となっている。

今回展示された作品は、より内省的で、以前のようなマイケル・ジャクソンをほのめかす表現も見当たらなかった。個展のメインに据えられたのは、家族を養うために自身のアート活動を中断していた元フォトグラファーの母、クラウディアとコラボレートした2枚組の作品だ。クラウディアが写真、ソラーノが絵画で互いを描いたポートレートからは、母と息子の強い絆がうかがえる。

MANUEL SOLANO(マニュエル・ソラーノ)

モスキート工場をめぐる冒険

画像: ペドロ・ネヴェス・マルケスの映像作品『A Mordida』より 2018年 COURTESY OF THE ARTIST ANDGALLERIA UMBERTO DI MARINO

ペドロ・ネヴェス・マルケスの映像作品『A Mordida』より 2018年
COURTESY OF THE ARTIST ANDGALLERIA UMBERTO DI MARINO

 2019年1月に35周年を迎えた、ダウンタウン地区の「マイアミ・ペレス美術館」(PAMM)では、ポルトガルのアーティスト、ペドロ・ネヴェス・マルケスの『A Mordida(噛み痕)』を開催。美術館が制作を依頼してできた新作2本を含む映像作品を上映した。タイトルでもある『A Mordida』は、ウイルスの蔓延を防ぐために遺伝子操作した蚊を作る研究施設“モスキート工場”を舞台に繰り広げられる、ドキュメンタリーともフィクションともつかない短編作品で、観るものを暗黒の世界に引きずり込んでいく。

 舞台は政権交代が進行中のブラジル。登場人物たちはジカウイルスの脅威にさらされる。「現在のブラジルでは偏狭な保守主義が台頭しています。特に国純主義者のジャイール・ボルソナーロが大統領選を制したことで、それに拍車がかかりました。この映画はそのような現状を反映したものです」とマルケス。「こうした“攻撃”への抵抗として、人々が親密に関わり合い、やさしく互いを容認する社会を私は提案しているんです」

 一方、PAMM内の吹き抜けのプロジェクト・ギャラリーでは、ペルーのアーティスト、ホセ・カルロス・マルティナの《アメリカン・エコー・チェンバー》を展示。これは15個のキネティック・ライト(動く照明)を使ったシリーズで、公園で花火を楽しむペルーの習慣にインスピレーションを得た作品だ。

PEDRO NEVES MARQUES(ペドロ・ネヴェス・マルケス)

《アメリカン・エコー・チェンバー》
会期:~2020年1月26日まで
場所:マイアミ・ペレス美術館
住所:1103, Biscayne, Boulevard, Miami
公式サイト

2人のギャラリストが見せる「ミニマリスト・ポップアート」

画像: ピーター・ハリーの《Adrift》 2018年 (78×70½インチキャンバスにアクリル絵の具、蛍光アクリル絵の具、Roll-A-Tex) PHOTO: MATTHEW GRUB. COURTESY OF THE GREENBERGGALLERY/WILLIAM SHEARBURN GALLERY, ST. LOUIS AND GREENE NAFTALI, NEW YORK

ピーター・ハリーの《Adrift》 2018年 (78×70½インチキャンバスにアクリル絵の具、蛍光アクリル絵の具、Roll-A-Tex)
PHOTO: MATTHEW GRUB. COURTESY OF THE GREENBERGGALLERY/WILLIAM SHEARBURN GALLERY, ST. LOUIS AND GREENE NAFTALI, NEW YORK

 ギャラリストのラリー・ガゴシアンとジェフリー・ダイチは、4回めとなる毎年恒例のコラボ企画をデザイン地区のムーアビルで再び開催。《Pop Minimalism | Minimalist Pop(ポップなミニマリズム/ミニマリストのポップ)》と題したこの展覧会は、戦後のアメリカを席巻した抽象表現主義への反発としていずれも1960年代初めに生まれた、ポップ・アートとミニマリズムという極めて対照的な2つの潮流の共通点を探ろうとする試みだ。

ポップ・アートが従来のハイ・アートとロー・アートの垣根を取り払うためにマスメディアのイメージを利用したのに対し、ミニマリズムは工業用素材を使用して、単純化した幾何学的なフォルムを追求した。

では、両者の共通点とは?――この展覧会では、ピーター・ハリーやジェフ・クーンズ、アダム・マキューエン、サラ・モリス、リチャード・プリンスらの作品を通して、既製品を使用するレディメイドの手法や、現代アートに与えた永続的な影響など、2つのムーブメントが多くの重要な要素を共有していることを明らかにした。

 

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