BY BENOÎT LOISEAU, TRANSLATED BY FUJIKO OKAMOTO
持続可能なファッションと、コロンブス以前の先住民文化にインスパイアされた家具の出会い
2018年のデザイン・マイアミ・ビジョナリー・アワードは、メキシコ人夫婦のデュオ、カーラ・フェルナンデスとペドロ・レイエスが受賞した。ファッションデザイナーの妻フェルナンデスは、メキシコの土着的なコミュニティと協力しながら、幾何学模様の民族衣装や伝統工芸にインスパイアされた服やジュエリーまで、「持続可能性」に焦点をあてた作品を制作することで知られる。建築家からアーティストに転身した夫のレイエスは彫刻やビデオ、パフォーマンスなど、社会問題に切り込んだ作品(廃棄された武器を楽器にした機械じかけのオーケストラなど)を発表し、高い評価を得ている。
この機会に、フェルナンデスとレイエスは、ふたりの活動の集大成ともいえるコラボ展をデザイン・マイアミで開いた。3000年前から伝わる技法を用いたレイエスの三本脚の石皿型チェアや、フェルナンデスのテキスタイルを含むふたりの代表作をはじめ、家具、グラフィックデザインなどを公開。
また、レイエスとフェルナンデスがこのイベントのためにコラボレートしたアメリカ大陸のグラフィックマップには、ヨーロッパ諸国による植民地化以前から居住していた300を超える先住民族の名前がすべて書き込まれている。このマップは、フェア会場のテントの正面や二人の展示スペースの壁、特設ショップのTシャツやグッズにも描かれていた(こうしたグッズの収益は、メキシコの職人を支援する「Taller Flora」、引き離された移民家族の再会を支援する「ImmigrantFamilies Together」という2つの慈善団体に寄付された)。
廃材で作り上げたダンスステージ
マイアミビーチ・コンベンションセンターに新設されたグランド・ボールルームのオープンを記念して、メキシコ人アーティスト、アブラハム・クルズヴィエイガスの作品展が行われた。併せて、スイスのキュレーター、フィリップ・カイザー、アルゼンチンの振付師バーバラ・フォルケスとコラボレーションしたパフォーマンス的作品《Autoreconstrucción(自己再構築)》も上演。これは2018年初めにニューヨークの非営利アートスペース「キッチン」でも上演された作品だ。
アクロバティックなパフォーマンスと、ファウンド・オブジェ(製品や廃棄物などを再利用したアート)のインスタレーションを掛け合わせた作品で、今回は数人のミュージシャンやダンサーがアートフェアの期間中、一日2回のショーを行った。アート・バーゼル・マイアミビーチで行われた唯一の無料イベントだ。地元で回収された廃棄物(以前のバージョンではホウキ、ビリヤードのキュー、ホッケーのスティックが使われたことも)を使った今回の作品は、コロンブス以前のメキシコ先住民の文化、とりわけ伝統音楽やワステカ族の踊りからインスピレーションを得たものだった。