BY MASANOBU MATSUMOTO
2018年9月、パリ・ルーヴル美術館に併設する「カルーゼル デュ ルーヴル」で自身初の個展『NAKAMA des ARTS』を開いた香取慎吾。その“凱旋”を兼ねた日本初個展が始まった。会場は、東京・豊洲にある「IHI ステージアラウンド東京」。日本で唯一の360度回転劇場だ。場所の特異性を活かしながら、香取は、この記念すべき展覧会を「いまだかつてないものになった」と語った。
何が他に類がないのかーースタートからだ。まず来場者は劇場の椅子に着席し、このために制作したというショートムービーを観ることから展覧会は始まる。そして、このオープニング映像が終わるとスクリーンが開き、その奥に展示スペースが現れるのである。「これは、僕がコンサートやライブでやってきた演出。みなさんに、気持ちが最高潮にあがった状態で、絵を観てほしくて」と香取はその意図を述べる。
実際の展示スペースには、既存の作品群に加え、本展への特別な思いを込めた新しい作品も並ぶ。なかでも象徴的なのが、巨大なクッション性の彫刻《Boum! Boum! Boum!》だ。フランス語で“ドキドキ”と心臓の鼓動音を示すこの新作オブジェを「“香取慎吾”をより近くに感じてもらえる作品です」と説明する。この作品の模型を紙粘土で作っていたとき、香取は自身の脈音を録音。このオブジェに手や耳を当てると、その鼓動が振動として感じられるという仕掛けだ。
今回発表された新作群は、概して香取の“身体性”がコンセプトになっている。10年間溜めていたという自身の毛髪を使った絵画や、以前歯医者で作ってもらったが一度も使っていないマウスピースをモチーフにしたオブジェなど。さらに自身の黒目部分を写真に取り、素材として使った平面作品もある。
「僕はアイドル。そしてアイドルは、自分が素材なんです。自分が素材になって、いろいろな自分をみてもらいたいと思ってステージに立ってきました。僕の場合、絵も同じ。絵を通じて僕のいろんな部分をもっと知ってほしいし、伝えたい」と香取は話す。そして、「むしろアートならば、僕のもっと深いところまで知ってもらえると思っている」とも。
本展を通じて、改めて驚かされるのは、既存の美術の枠にとらわれない自由でストレートな香取の創造力、加えて、“実現力”だ。過去に、香取のアトリエで『T JAPAN』がインタビューをした際、“こんなこともやってみたい”と話していたことのほとんどを、ここで形にしている。毛髪の作品、劇場のような展覧会、そして、会期中に会場を訪れ、新作を作り続けるというアイデアなど。実際に、展覧会が終わる6月まで、時間があるときは会場を訪れ、作品に手を加えたり、また新しい絵を描いていくという。「壁や床、絵が描けるスペースはまだまだありますから」と香取は楽しそうな顔で会場を見回す。ここで、彼のアートはどう増殖していくのか、いまから楽しみだ。
『サントリー オールフリー presents BOUM ! BOUM ! BOUM ! 香取慎吾 NIPPON初個展』
会期:~6月16日(日)
会場:IHI ステージアラウンド東京
住所:東京都江東区豊洲6-4-25
時間:10:00、11:15、12:30、13:45、15:00、16:15、17:30、18:45、20:00
※ 1回公演あたり350名入場。各回120分の入替え制
入場料:一般 ¥3,500、 高校・中学生 ¥3,000、小学生以下 ¥2,500
チケットは長期公演のため、期間をわけて販売
第1期[~4/15(月)]、第2期[4/17(水)~5/20(月)]は発売中。第3期[5/22(水)~6/16(日)]は4月21日(日) 12:00~より発売
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