異分野で活躍するクリエイター、現代美術家のアイ・ウェイウェイと建築家フランク・ゲーリーのふたりが、意外な接点から「アートと建築の関係」まで、あらゆることを語り尽くした

BY JORI FINKEL, PHOTOGRAPH BY JOE LEAVENWORTH, TRANSLATED BY MAKIKO HARAGA

FG 建築の世界でも、そういう理想的な状況を探り、それを実現しようとすることは重要だと思うね。

 しかし、建築の場合は非常に制約が多い。使い勝手とかコストとかの制限がたくさんありますよね。ディベロッパーという存在もありますし。

FG 確かにね。しかし、僕はあえて「じゃあ、次は?」と問いかけたい。コストの問題は解決した。建物の安全性も確保した。役所の建設局の承認も取りつけた。課題はすべてクリアした。「じゃあ、次は?」。それを考えるのが面白いんだよ。むしろ、それ以外に建物をデザインする価値なんてあるだろうか? 「次」を考えられる建築家を雇った人が、その恩恵を享受することができる。たとえば、ビルバオの美術館を建てるのには1億ドルかかったけれど、開館後はそれをはるかに上回る収入をもたらした。とはいえ、あれはまったくの予想外だったけれどね。自分では気に食わないところがたくさんあるから、どうしてあの建物がそんなに人気があるのか、さっぱりわからないんだ。

 私はまだ行ったことがないんですが、館内の空間が非常にうまくデザインされていると聞きました。結果的にあなたはいい意味で間違っていたわけで、ラッキーでしたね。

FG ビルバオ(1997年竣工)ができたのは、当時グッゲンハイム美術館のディレクターだったトム・クレンスの、挑発的で面白いひと言があったからだよ。「もうあの世に行ってしまって主張ができないアーティストには、直線でできた展示室でも構わない。しかし、まだ生きているアーティストには、刺激的な展示室を創ってほしい」と彼は言ったんだ。ソル・ルウィットやアンゼルム・キーファー、ジェニー・ホルツァーといった一流のアーティストたちは、直線的ではない展示室を気に入ってくれた。完璧に整った空間じゃないことにホッとする、遊びの場を提供されたように感じると言っていたよ。

 白い箱みたいな美術館の展示スペースは最悪です。あれにはなんの意味も見いだせない。私は建築とアートは共存すべきものだと思う。地下室だって使えるし、ショッピングモールや刑務所だっていい。そういう場所はアートとの矛盾を生み、挑戦を突きつけてくる。2016年にフィレンツェのストロッツィ宮で個展をやりましたが、ここは通常はもっと古い時代の作品を取り上げるんです。だから何年ものあいだ窓がふさがれていた。そこで私は、窓を開けて自然光を入れ、宮殿が建てられた当時から残っている暖炉などのインテリアが見えるようにしてほしいと頼みました。「暖炉があるとなにか問題でも? 私はあの暖炉と勝負したいんだ」と言ってね。2014年にアルカトラズで個展を開いたときは、刑務所の壁に触れることも、モノをかけたりすることもできなかった。すごく厳しかったけれど、そういう制約からこそ自由が生まれるんじゃないかと思います。

FG レゴブロックを作品の素材に選んだのはどうして?

 アルカトラズの展示を考えていたとき、アムネスティ・インターナショナルがさまざまな「政治犯」の写真を提供してくれたのですが、どれも写りが非常に暗くて不鮮明だった。失踪前に撮った写真が1枚しかないというケースもいくつかあったようです。20年以上も行方がわからなくなっている、このチベットの高僧もそうです。はたしてこんな写りの悪い写真ばかりを使って展示が成り立つのかと思いあぐねていたところ、レゴを使えば画質を一定化できると考えついたんです。レゴはいわば画素ですからね。画素で処理すれば不鮮明な画像もシャープになり、インパクトのあるビジュアルになる。そうやって私たちは政治犯のポートレートを176点制作しました。チェルシー・マニング(機密文書漏洩などの罪で有罪判決を受けた元米陸軍兵士)も、イランやロシア、中国の政治犯も、みんなはっきりと鮮やかに見えます。

FG 何年も前だが、レゴの創業家の人に会ったことがあるよ。新しいレゴを作る可能性について議論したかったんだ。

 違う種類のレゴができたら面白そうですね。今の時代、どの街にも同じような建物が並んでいます。車のデザインも似通っている。どうしてそんなふうになってしまったのか。もったいないですよ。アーティスト頼みの社会は厄介かもしれないが、アーティストのいない社会は本当にぞっとする。

FG 僕は建築を始めたときから、短時間で醜悪な街をつくる業界に足を踏み入れたのだと自覚していたよ。当時、そういう街づくりに反発する声も多かった。でも嫌がるわりには、自らそこに加担していることについては誰もが無頓着なようだった。そこで僕は、反発する声と対話する方法はないだろうかと考え、誰もが激しく忌み嫌う金網という素材をあえて選んでこう問いかけたんだ。「これをアートや、美しいものにあしらってみたらどうだろう? もしそれがまんざらでもなかったら?」

 中国美術学院が初めて建築コースを開講したとき、初代講師として招かれたんです。そこで私は、レンガではなく、われわれが通常ゴミとして捨てるものを建材にするよう学生たちに指示しました。「まず、ペットボトルやコーラの瓶で考えてみよう。これで構造物をつくるためには、素材のロジックをどう使えばいいだろう?」って。

FG 最近はプラスチックが人体に悪影響を及ぼすという理解が広まっているが。

 その意味では、真のアーティストや建築家の仕事はすごく政治的だと言えるでしょうね。アートや建築はつねに平凡なものの見方と対立し、一般とは異なる方向へ向かおうとしますから。

FG 君は世界をいい方向へと導こうとする人だ。体制の管理下で大いに苦しめられ、何年ものあいだ苦難の中で闘い続けてきた。僕は今、仕事の6割を慈善活動に充(あ)て、アートを通じて人々の絆を結ぼうとしているんだが、君のしてきたような、衝突を招いたり逮捕されたりするような活動じゃない。私が刑務所で過ごしたのは一夜だけ、しかもマリファナ所持でだよ。

 どれくらいの量を持っていたんですか?

FG 多すぎるほどさ。当時、大麻の所持は重罪だった。

 売っていた? それとも自分で吸っていたんですか?

FG どちらでもない。あるロックバンドの女性をデートに誘ったらマリファナが欲しいと頼まれてね。友人が「フランキーへ」と書いた袋を持ってきてくれたので、それを上着のポケットに入れて出かけたんだ。でも、クスリを差し出すと、彼女はいらないと言う。自宅へ戻る途中の高速道路で睡魔に襲われて蛇行運転してしまい、警察に止められたんだ。

 なんだかはめられたみたいですね。

FG いや、それは違う。だけどまあクレイジーだったよ。警察が車を調べても何も出てこない。でも、後部座席にあった私の上着から袋を見つけられてしまった。

 でも、あなたの上着じゃなかったんでしょう?

FG 僕の上着さ。

 だから、あなたの上着じゃなかった、んですよね?

FG その言い逃れは思いつかなかったな(笑)。僕にぴったりの上着だったし。というわけで一晩拘留されたよ。

 刑務所の設計って手がけたことはありますか? 面白そうですが。

FG ロサンゼルスの女子刑務所を見学したことはあるよ。12人部屋の片側にベッドが6台あって、ひとつのトイレを12人で使う。ベッドの上段には蛍光灯がついてるんだが、24時間点けっぱなしの灯りの下でどうやって寝られるのか想像もつかないよ。アメリカの刑務所では、罪もなく入所させられた人間も出てくるときには犯罪者になってしまうだろうな。

 どこの刑務所も似たようなものでしょう。あそこは残忍な人間になることを教える場所ですからね。

 

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