森村泰昌の約35年のキャリアを総括する大規模な個展。1950年代末から60年代にかけて、アメリカを中心に起こった「カラーフィールド」をテーマにした企画展。2.5次元印刷技術を使ったオノデラユキの新作展。今週絶対に見るべき3つのエキシビションをピックアップ

BY MASANOBU MATSUMOTO

『森村泰昌:ワタシの迷宮劇場』|京都市京セラ美術館

画像: 森村泰昌《ワタシの迷宮劇場 M149》1987年 © YASUMASA MORIMURA

森村泰昌《ワタシの迷宮劇場 M149》1987年
© YASUMASA MORIMURA

 森村泰昌は、名画に登場する人物や女優、偉人などに扮したセルフポートレイト作品で知られる現代美術家だ。「西洋美術史になった私」シリーズではモナ・リザやフリーダ・カーロなどに、「日本美術史になった私」では写楽が描いた奴・江戸兵衛などに、「女優になった私」ではマリリン・モンローやマレーネ・ディートリッヒらにーー。そうした「自画像的作品」を通じて、ときにジェンダーや人種、年齢というものを含んだアイデンティティの多様性を視覚化し、また「私」の個人史と歴史の交錯点を表現してきた。

 京都市京セラ美術館では、森村の35年を超えるキャリアを総括する大規模個展が開催中だ。メインの展示作品は、1985年のデビュー時から撮り溜められてきた秘蔵のインスタント写真、約800枚。森村にとって、制作における試行錯誤の痕跡のような存在で、彼の作品におけるバックグラウンドの全貌をうかがい知ることができる。また、新たな試みとして《影の顔の声》と題した作品も披露する。これは1994年に森村が自作の小説を自ら朗読して制作したCD《顔》を発展させた、いわば「声の劇場」。展示室に特設の音響空間をしつらえ、無人朗読劇として上映する。

 なお、同美術館の向かいにある京都国立近代美術館では、コレクション・ギャラリー内で二人展『合わせ鏡の対話/不在の間――森村泰昌とドミニク・ゴンザレス=フォルステル』が開催中。本展で展示されたインスタント写真から制作された実際の作品もいくつか展示されている。

『京都市京セラ美術館開館1周年記念展 森村泰昌:ワタシの迷宮劇場』
会期:~6月5日(日)
会場:京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ
住所:京都府京都市左京区岡崎円勝寺町124
時間:10:00〜18:00(入場は閉館の30分前まで)
休館日:月曜 ※ただし5月2日(月)は開館
料金:一般 ¥2,000、大学・専門学校生 ¥1,600、高校生 ¥1,200、中・小学生 ¥800、未就学児無料
電話:075(771)4334
公式サイトはこちら

『カラーフィールド 色の海を泳ぐ』|DIC川村記念美術館

画像: フリーデル・ズーバス《捕らわれたフェニックス》 1982年、オードリー&デイヴィッド・マーヴィッシュ蔵 © 2022 FRIEDEL DZUBAS / ARS, NEW YORK / JASPAR, TOKYO G2749

フリーデル・ズーバス《捕らわれたフェニックス》
1982年、オードリー&デイヴィッド・マーヴィッシュ蔵
© 2022 FRIEDEL DZUBAS / ARS, NEW YORK / JASPAR, TOKYO G2749

「カラーフィールド」とは、1950年代末から60年代にかけて、アメリカを中心に起こった抽象絵画の潮流のひとつ。このムーブメントを牽引した作家たちは、大きなキャンバス一面に色彩を用いて「場=フィールド」を創出させることで、広がりのある豊かな画面を目指した。またその過程で、作家たちは、変形的なシェイプドキャンバス、絵の具をキャンバスに染み込ませるステイニング技法、またスプレーガンの噴霧で色を蒸着させる画法など、新しい手法にチャレンジし、絵画の新しい地平を切り拓いた。

 DIC川村記念美術館ではじまった本展は、世界で最も質の高いカラーフィールド作品を所蔵している「オードリー&デイヴィッド・マーヴィッシュ・コレクション」を中心に、このトレンドに関連した9名の作家の作品約50点を紹介する。ジャック・ブッシュからフランク・ステラまで、床置きの立体作品や横幅5メートルを超える大型絵画なども並び、作家たちが挑んだ「色彩の豊かな広がり」をストレートに堪能できる作品構成だ。また展示にあたり、企画チームは各部屋ごとの明るさを、作品テーマに合わせ微妙にコントロールしたという。本展全体を通してゆらめく色の海を回遊するような鑑賞体験を味わえる。

『カラーフィールド 色の海を泳ぐ』
会期:~9月4日(日)
会場:DIC川村記念美術館
住所:千葉県佐倉市坂戸631
時間:9:30〜17:00 (入館は16:30まで)
休廊日:月曜(ただし7月18日は開館)、7月19日(火)
入館料:一般 ¥1,500、大学・専門学校生・65歳以上 ¥1,300、高校・中学・小学生 ¥600
※事前予約制。詳細はこちら
電話:050-5541-8600(ハローダイヤル)
公式サイトはこちら

オノデラユキ『ここに、バルーンはない。』|リコーアートギャラリー

画像: 作家による制作中のイメージ(参考画像) © YUKI ONODERA

作家による制作中のイメージ(参考画像)
© YUKI ONODERA

 オノデラユキは、パリ在中の写真家・現代美術家。カメラのなかにビー玉を入れて撮影したり、コラージュやペインティングの要素を取り入れたり、写真という枠組みにとらわれない、独自の視覚表現を展開してきた。

 本展では、銀塩プリントをキャンバスにコラージュし、そのうえにリコーの2.5次元印刷「StareReap2.5」でプリントした新作を披露する。創作の出発点は、彼女がみつけた一枚の古い写真。オノデラは、そこに写る、今は姿を消してしまった熱気球の記念碑に惹かれ、現地を撮影してまわったそうだ。実際、この熱気球のブロンズ像は、ニューヨークの自由の女神で知られる彫刻家・バルトルディが作ったもので、戦中ドイツ軍に「溶かされて」なくなってしまったらしい。像が溶けてなくなり、別のものに生まれ変わっていくーーそのイメージを、オノデラはStareReap2.5による、レリーフのような立体印刷で表現してみせた。

 新作は7枚。大きく写真を拡大し、円形のギャラリーに合わせパノラマのように配置した作品空間も面白い。また、2006年から14年にかけて制作した《Eleventh Finger》シリーズなど、作家自身がセレクトした過去作品も会場内に展示する。

オノデラユキ『ここに、バルーンはない。』
会期:~4月9日(土)
会場:リコーアートギャラリー
住所:東京都中央区銀座5-7-2 三愛ドリームセンター 8・9F
時間:12:00~19:00(最終日は18:00まで)
休館日:日・月曜、祝日
料金:無料
電話:03(3289)1521
公式サイトはこちら

※新型コロナウイルス感染予防に関する来館時の注意、最新情報は各施設の公式サイトを確認ください

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