ソーホーのオリジナルのロフトを、愛と情熱を込めて保存するべく奮闘しているカップルがいる。彼らは消え去った時代の記憶を、日々の暮らしの中で蘇らせている

BY MARY KAYE SCHILLING, PHOTOGRAPHS BY FRANÇOIS HALARD, TRANSLATED BY MIHO NAGA

画像: カーブした仕切りに囲われたシャワーとバスルームのシンクは最初からあったもの シャワーの向こうには主寝室が見える

カーブした仕切りに囲われたシャワーとバスルームのシンクは最初からあったもの
シャワーの向こうには主寝室が見える

 彼らの家に入ると、実際、タイムカプセルに足を踏み入れたような感じを抱く。それはことに、あちこちに置かれている70年代イタリアのものを中心とした美術品や家具のせいでもある。いつかこのロフトに住むときが来ると奇妙にも予知して、彼女は何十年もの間、こうしたものを蒐集してきたのだった。19世紀に建てられたニューヨークのロフトの硬質な美に、その品々はぴったりマッチしている。「これのおかげでキッチンでお湯が使えるのが最高」とサスーンは言い、銀色のパイプを指す。その管は部屋の奥の壁の上部を伝って天井を横切り、シンクまで直角に降りてくるように配置されている。1996年に出版された『The Dean & Deluca Cookbook』に載っているレシピのいくつかは、このキッチンで試作されたものだ。キッチンは可動式のアイランドで、木製の天板がつけられている。これはセグリックが手作りしたものだが、形は60年代にはやったジョエ・コロンボのデザインによるカレローン・ミニ・キッチンにそっくりだ。

セグリックとディーンがこのロフトに引っ越してきた頃は、ふたりとも若くて貧乏だったため、セグリックがほとんどの設備を手作りしていた。たとえば、古い本棚に使われていた合板の棚を再利用して作ったドナルド・ジャッド式のキッチン棚もそのひとつだ。トイレの天井からつり下がっているランプは、カナル・ストリートで見つけた安いパーツを巧みに組み合わせて作ったもの。サスーンは言う。「トイレにジョエ・コロンボがデザインしたランプを置こうかと思ったのだけど、ちょっと考えて、いや、いらないなと。ジャックが作ったランプがあまりにもぴったりだったから」

画像: サスーンは、ロフトに17ある窓のふたつにルチオ・フォンタナの作品を掛けて、壁の面積不足を補った。革のソファはアフラ&トビア・スカルパの作品。コーヒーテーブルはウィリー・リッゾ、入れ子式のテーブルセットはジャンフランコ・フラッティーニがデザインしたカッシーナ製。フロアランプは、 ロベルト・ガベッティとアイマロ・イゾラの作品だ

サスーンは、ロフトに17ある窓のふたつにルチオ・フォンタナの作品を掛けて、壁の面積不足を補った。革のソファはアフラ&トビア・スカルパの作品。コーヒーテーブルはウィリー・リッゾ、入れ子式のテーブルセットはジャンフランコ・フラッティーニがデザインしたカッシーナ製。フロアランプは、 ロベルト・ガベッティとアイマロ・イゾラの作品だ

 主寝室とゲストルームは、基本的に、セグリックのキャンバス用の格子枠を収納した合板のキャビネットで仕切られただけで、それをはさんで背中合わせにベッドが置かれている(キャビネットは、今ではドアがついたクロゼットになっている)。 プライバシーはないも同然だが、もし私的な空間が欲しければ、丸くカーブした仕切りに囲われた、トイレやバスタブや、もともとついていたシャワーにこもればいい。「もちろん、私たちはそれをオーガスマトロンって呼んでるんだけど」とサスーン。ウッディ・アレン製作の1973年のコメディ映画、『スリーパー』に出てくる同じ名前の未来型キャビネットのことを指しているのだ。

 

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