BY JUN ISHIDA, PHOTOGRAPHS BY YASUYUKI TAKAGI
安齊と吉川、作る環境も扱う素材も異なるふたりだが、その作品には通じるものがある。どこか未完成な部分を残すところだ。安齊の作品ではそれは作業過程で生じる偶然性であり、吉川の作品では使用する木材の風合いである。こう告げると、ロビンから次のような言葉が返ってきた。「安齊も吉川も、どこで作業を止めるかを知っています。仕上げすぎることなく、素材そのものにその魂を語らせる作品はとても美しい」。
この未完成の美は、日本独自の美意識に基づくものだとふたりは考えている。「日本の作家は素材の美しさを活かすことに長けています。また装飾芸術においてはコンセプチュアルであることより、使いやすさと美しさのバランスが大事ですが、日本人はこの二つを結びつけることもうまい」。自然美、そして有用性と美の共存は、「ギルド」が掲げるマニフェストでもある。
この春、「ギルド」に新しいスペースが誕生した。「ハウス・オブ・ボウルズ」と彼らが呼ぶ地下のスペースはカルチャーイベントやプライベートディナーを催すためのもので、1,000冊以上の書籍が並ぶライブラリーや、アートポスターなどを扱うアートルームも併設されている。
棚にずらっと並ぶのは、彼らが世界各地から集めたボウル(器)だ。ロビンは「器は『ギルド』のメタファー」だと述べる。「器は人類が最初に作った道具のひとつであり、美しさと機能性を兼ね備えています。デザインの世界は四半世紀ほどトレンドを追いかけてきましたが、今、人々はより根源的でサステナブルなものを求めている。日本や北欧はその流れをリードしていますが、ほかの国々はまだ気がついていません。「ギルド」は、こうした新しい時代の流れを発信する場所にしたい」。今は「アーツ&クラフツ運動の新たな始まりの時」というロビンとスティーブン。「ギルド」は新しいカルチャーの震源地でもあるのだ。