BY TOMONARI KOTANI

V8エンジンを2基積んだボート。トップスピードは約80km/h
時代とともに移ろいゆく人々の価値観。複雑で多様な世界において、その変化の兆しは見極めづらいが、少なくとも2010年代に入り、ラグジュアリーの定義が変わり始めたことは間違いないだろう。試しに、「あなたにとってラグジュアリーとは?」と周囲に問いかけてみてほしい。
引き続き物質的な充足を求める人もいるだろうが、「自分らしいライフスタイル」や「ヘルシーな心と体」の獲得こそをラグジュアリーだと捉える価値観が、思いのほか敷衍(ふえん)していることに気づかされるはずだ。そしてその兆候は、数少ない日本発のグローバル・ラグジュアリー・ブランドであるレクサスにも現れた。なにしろレクサスは、2017年の初めに「ボート」のお披露目を行なったのだから。

デザインの至るところにLEXUSらしい、ラグジュアリーなあしらいが施されている
PHOTOGRAPHS: COURTESY OF LEXUS

マイアミで行われた「LEXUS Sport Yacht Concept」の発表会に登場した、レクサスCBO豊田章男。「クルマだけではリーチできない顧客にブランド訴求するひとつのツールになれば」
PHOTOGRAPH BY TOMONARIKOTANI
カーブランドがボートを作る理由について、チーフブランディングオフィサーの豊田章男はこう語る。「レクサスは今、単なるクルマブランドではなく、ライフスタイルブランドへと進化すべく歩みを進めています。その思いを表現し伝えていくためには、エモーショナルなストーリーこそが不可欠だと考えます。ボートはその第一歩なんです」。「所有から体験へ」と消費の重心が移った今、ストーリー(=驚き)を与えられるブランドにこそ未来が待っているのかもしれない。