ラート競技の世界選手権で3度目の世界一に輝いた髙橋靖彦選手。アスリートを撮り続けるフォトグラファー、たかはしじゅんいちが語るその魅力とは

TEXT AND PHOTOGRAPHS BY JUNICHI TAKAHASHI

 去る5月上旬にスイス・マックリンゲンで行われた第13回世界ラート競技世界選手権大会で、髙橋靖彦選手(33歳)が男子個人総合で優勝、33年ぶり3度目の世界一に輝いた。男子種目別跳躍優勝、男子種目別斜転優勝と合わせ3冠である。

 2年に一度開催される世界選手権において、個人総合優勝は長年ドイツ選手が独占してきた。外国人として、日本人の髙橋選手が初めて優勝したのは2013年。世界のラート界にとっては衝撃的な出来事だったに違いない。

画像: 母校の筑波大学を借りて「斜転」競技を練習中の髙橋選手。2015年

母校の筑波大学を借りて「斜転」競技を練習中の髙橋選手。2015年 

 ところであなたは、ラートという競技を知っているだろうか。もしかしたらシルク・ド・ソレイユなどのサーカスで目にしたことがあるかもしれない。ドイツ発祥のスポーツで、人の大きさほどの鉄の輪を2本平行につないだ器具を用いて、さまざまな動きをする回転系のスポーツだ。競技としては、2本の輪をまっすぐ転がす「直転」、輪を傾けて片方のリングだけで回転する「斜転」、輪を転がし、その上を跳び越える「跳躍」の計3種目がある。体操やフィギュアスケートのように、組み入れる技の難度や演技の構成、芸術性などで採点が決まる。

 正直、日本ではまだ無名に近い競技である。選手である髙橋自身から見たラートの魅力とは、どんなところにあるのだろう。
「僕がラートにのめり込んだのは、簡単に回れるという特性、重力から解放された浮遊感に魅了されたからです。見ている方も、そうした浮遊感や、思いもしないような動きの連続にきっと興味を感じていただけると思います。近年は表現力が増して、芸術性の高い演技ができる選手が増えてきましたから、その個性の違いも面白くなってきました」

画像: 2014年2月、筑波大学で初めて撮影した髙橋選手。「競技を続ける上で、一番重要なのはモチベーションです。 つらい時、支えてくださる方々がいるのはとても心強い。多くの方に応援していただいていることも自分の強味だと思います」

2014年2月、筑波大学で初めて撮影した髙橋選手。「競技を続ける上で、一番重要なのはモチベーションです。
つらい時、支えてくださる方々がいるのはとても心強い。多くの方に応援していただいていることも自分の強味だと思います」 

 フォトグラファーである私とラートとの出会いは2013年。長年撮り続けているシリーズ企画「NIPPON-JIN project」に、ラートパフォーマーたちが参加してくれたのがきっかけだった。「マイナースポーツのアスリートを応援する気持ちで、僕らを撮っていただけないでしょうか」。そんな言葉に惹かれてカメラを携え、つくばの練習場まで出向いた。そのとき出会った髙橋選手は日本人初の個人総合優勝を果たしたばかりだったが、その謙虚な物腰にはおごったところはみじんも感じられなかった。

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