新たなコンサートホールの建設やジョン・ノイマイヤー振付による世界初演が話題のドイツの都市、ハンブルク。世界の演劇に造詣の深いジャーナリスト、伊達なつめさんによる現地レポートの「前編」

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 もうひとつの「リサイタルホール」は、主に室内楽用の小ホールで、最大550席の可動式。波打つ加工を施されたウッディなオーク材の壁が、理想的な音響を提供している。こちらを本拠とするのは、現代音楽を中心に手がけ、柔軟で果敢な解釈と多くのコラボで世界的に評価の高い、アンサンブル・レゾナンツ。

画像: レゾナンツラウム でライブ演奏を行うアンサンブル・レゾナンツ PHOTOGRAPH BY JANN WILKEN

レゾナンツラウムでライブ演奏を行うアンサンブル・レゾナンツ
PHOTOGRAPH BY JANN WILKEN

 じつは今回、ハンブルクに来て最初に訪れたのが、彼らのもうひとつの拠点である「レゾナンツラウム」という、怪しげな(?)ビル内にあるスペースだった。ものものしいほど堅牢なコンクリートで窓が小さく、威圧感に富むモダン建築風の建造物は、なんとヒトラーが造らせた高射砲塔を兼ねた元・防空壕。現在はライブハウスやレコード店、音楽学校などが入っており、レゾナンツラウムも、アート・ギャラリーのような洗練と混沌が同居するデザインの、若者でにぎわうクールなクラブだ。

 現代音楽のアンサンブルが、こうしたポップ系空間を根城にするという柔軟さと豊かさにまず感服してしまうし、その場所が、ミリオタ垂涎の元高射砲塔付防空壕という事実に、さらに別の衝撃が重なる。造船所と海軍基地のあった大都市ハンブルクは、第二次大戦時に連合軍に徹底的に攻撃され、街は壊滅状態になった。オルガンで有名な聖ミヒャエル教会や、宮殿と見紛う荘厳な市庁舎など、アルスター湖をのぞむ美しい街並みが多いけれど、戦前の建築物は10パーセントしか遺っていないそうだ。

画像: レゾナンツラウムが入るビルは、第二次大戦時にヒトラーが造らせた高射砲塔付き防空壕。壁の厚さだけで4メートルあるそう PHOTOGRAPH BY JANN WILKEN

レゾナンツラウムが入るビルは、第二次大戦時にヒトラーが造らせた高射砲塔付き防空壕。壁の厚さだけで4メートルあるそう
PHOTOGRAPH BY JANN WILKEN

 最新コンサートホールと元防空壕。シンボリックな2つの建造物で見えてくるのは、「音楽」を重視し、切り札的に使う、ハンブルクの文化のありようとその歴史的背景だ。次回はブラームスやメンデルスゾーンを生んだ19世紀以前の音楽都市としてのハンブルクと、振付家ジョン・ノイマイヤーの活躍によって世界有数のバレエ団に成長した今世紀の街の誇り「ハンブルク・バレエ」の活動から、ハンブルクが音楽にこだわる理由の一端に触れたいと思う。

取材協力
ハンブルク市観光局 Hamburg Tourismus
公式サイト

 

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