新たなコンサートホールの建設やジョン・ノイマイヤー振付による世界初演が話題のドイツの都市、ハンブルク。世界の演劇に造詣の深いジャーナリスト、伊達なつめさんによる現地レポートの「前編」

BY NATSUME DATE

 ドイツ第二の都市ハンブルクは、北欧にほど近いエルベ川沿いの港町。古くからハンザ同盟による経済活動で栄え、城主ではなく商人=市民が街を支え、文化をリードしてきた歴史をもつ。現在も貿易の拠点であり、ドイツの主要メディアが集まり、ポップス音楽をはじめとする流行の発信地として、話題にことかかない豊かな街だ。

 港湾周辺では、工場跡地を中心とした広いエリアで21世紀型の新都心をめざす「ハーフェンシティ計画」が進行中。昨年1月にオープンした、ホテル、集合住宅などを併設するコンサートホール「エルプフィルハーモニー」は、その象徴的存在だ。すでにハンブルクの新たなランドマークとして「エルフィ」の愛称で親しまれ、内外から多くの音楽ファンや観光客が訪れるホット・スポットになっている。

画像: エルベ川に浮かぶように見える目を引く外観。 エルプフィルハーモニーは、いまハンブルクでもっともホットなスペース PHOTOGRAPH BY THIES RAETZKE

エルベ川に浮かぶように見える目を引く外観。
エルプフィルハーモニーは、いまハンブルクでもっともホットなスペース
PHOTOGRAPH BY THIES RAETZKE

 エルベ川に突き出すようにそびえる、この異形感ただようビルのデザインは、プラダ青山店やロンドンのテート・モダンを手がけた建築ユニット、ヘルツォーク&ド・ムーロンによるもの。この地に古くからあるレンガ造りの倉庫の面影を遺していて(1966年ヴェアナー・カルモルゲン設計)、訪れた人は、まずなじみ深い赤レンガのエントランスから入り、全長82メートルのチューブ型の近未来風エスカレーターで、8階の広場プラツアに到着する。

 ここまでは誰でも入れるので、コンサートのチケットが取れなくても、地上37メートルの展望デッキからエルベの流れと発展を続けるハーフェンシティなど、躍動的なハンブルクの街を見下ろすことができる。見学は混雑を避けるため時間制(9:00~23:30)で、直接出向くと待つ可能性もあるが無料。インターネットで日時指定予約をする場合はひとり2ユーロ。深夜までオープンしているのがうれしい。

画像: 8階にあるプラツア(展望デッキ)の外は、エルプフィルハーモニーの展望デッキ。360°回遊できる 観覧時間:9:00~24:00(最終入場23:30) 事前予約:www.elbphilharmonie.de PHOTOGRAPH BY IWAN BAAN

8階にあるプラツア(展望デッキ)の外は、エルプフィルハーモニーの展望デッキ。360°回遊できる
観覧時間:9:00~24:00(最終入場23:30)
事前予約:www.elbphilharmonie.de
PHOTOGRAPH BY IWAN BAAN

 ここから木製の階段を上ると、心臓部の大ホール。中央のステージを囲む2100席は「ヴィンヤード型」の名の通り、ぶどうの段々畑のようにアトランダムに広がっていて階差を感じさせず、どの席に座っても視覚・聴覚ともに舞台を近く感じられる。設計を手がけたのは日本の音響設計家・豊田泰久。複雑に成形された石膏ファイバープレートの壁と天井の反射板は、クリアで繊細な音質を実現すると同時に、見た目にも曲線系のホールのデザインにマッチしていて、とても美しい。

 この「大ホール」は、北ドイツ放送エルプフィルハーモニー管弦楽団(略称NDR。旧称・北ドイツ放送交響楽団)の本拠地となっているが、コンサートのラインナップは、クラシックのみならずジャズ、ポップス、ワールドミュージックなど多岐にわたり、幅広い層にひらかれている。平日夜の18時台と20時台に開演する、各1時間のNDRのコンサート・シリーズなどもあり、気軽に楽しめると好評だ。「エルフィのチケットはいつも売り切れで取れない」という噂が広まっているけれど、当日券やキャンセルが出ることも多いので、ギリギリまであきらめず、ホームページをチェックしてみてほしい。

画像: エルプフィルハーモニー・大ホール。 ヴィンヤード型の客席はいちばん遠くても舞台から30メートルと、距離が近く感じられる PHOTOGRAPH BY IWAN BAAN

エルプフィルハーモニー・大ホール。
ヴィンヤード型の客席はいちばん遠くても舞台から30メートルと、距離が近く感じられる
PHOTOGRAPH BY IWAN BAAN

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