’70年代ベルリンの架空のダンスカンパニーを舞台にした、ルカ・グァダニーノ監督の最新作『サスペリア』。そのロケ地に選ばれたのは、イタリアにある1912年築の廃墟同然のホテルだった

BY ALICE NEWELL-HANSON, PHOTOGRAPHS BY MIKAEL OLSSON, TRANSLATED BY IZUMI SAITO

 1968年、200室を有するイタリア、ヴァレーゼの「グラン・ホテル・カンポ・デ・フィオーリ」で、最後の宿泊客がチェックアウトした。以来、深い森に覆われたアルプス山麓の丘の上に佇む、華やかなりしアール・ヌーボー様式のホテルは、管理人家族が住むだけの、大部分は使われていない建築物として残された。壁の鮮やかな塗装は色あせて剥がれ落ち、天井の一部は崩れ、ほとんど当時のままに残された家具は埃にまみれていた。これこそが、ルカ・グァダニーノ監督が、ダリオ・アルジェントによるホラー映画の名作『サスペリア』(1977年作)のリメイクを、この場所で撮影すると決めた理由だった。

画像: ティルダ・スウィントン演じるマダム・ブランのアール・デコ調のリビングルーム。特徴的なモアレ柄の壁紙は、ミラノを拠点とするテキスタイルブランド「デダール」社によるもの

ティルダ・スウィントン演じるマダム・ブランのアール・デコ調のリビングルーム。特徴的なモアレ柄の壁紙は、ミラノを拠点とするテキスタイルブランド「デダール」社によるもの

「イタリアに到着すると、私たちは別のロケ地がないか探して回りました。運営面で考えると、ここでの撮影はほとんど悪夢になりそうでしたから」と、プロダクション・デザイナーを務めたインバル・ワインバーグは話す。その全盛期には「まさに映画のグランド・ブダペスト・ホテルが実物になって現れたかのようだった」という建物は、しかし、ワインバーグと彼女のチームが視察に来た時には電気も水道も通っていなかった。「それでも、このホテルには賭けてみたくなる何かがあったんです」と、ワインバーグは当時を振り返る。そうして彼女はこの建物の改修に着手した。映画の主な舞台である、’70年代ベルリンの架空のダンスカンパニーの拠点へと作り変えるだけでなく、機能的な撮影現場としても使えるように。

シンプルに言えば、『サスペリア』はダコタ・ジョンソン演じる若いアメリカ人ダンサーのスージー・バニヨンが、冷戦下のドイツの厳格で権威ある舞踊団「マルコス・ダンス・カンパニー」で送る日々を追った映画である。ただし『サスペリア』の劇中では何一つとして、そうシンプルには事が進まない。しばらくしてスージーの友人サラ(ミア・ゴス)が気づくように、このカンパニーは、隠された秘密の部屋で恐ろしい儀式を執り行う魔女たちによって運営されているのだった。

 

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