BY KURIKO SATO
フランスの名匠、クロード・ルルーシュ監督の名を、かつて世界に知らしめた不滅の恋愛映画、『男と女』から53年。再びオリジナル・キャストで続編が作られるという、“奇跡”が起こった。
主演のジャン=ルイ・トランティニャンとアヌーク・エーメ、そして監督の3人ともが80代というトリプル・シルバー・チームによる新作『男と女 人生最良の日々』は、穏やかななかにも以前と変わらぬ情熱と純粋さを秘め、観る者を永遠のロマンティックな時間に誘ってくれる。このような作品をいかに生み出すことができたのか、ルルーシュ監督に話しを聞いた。
「奇跡は説明しようがありません」。82歳を迎えてもなお、かくしゃくとした様子のクロード・ルルーシュ監督は、笑みを浮かべながらこう語る。
「1966年に『男と女』を作ったときは、まさかこの映画が世界でこれほど成功するとも、こんなに長く人々に愛され続けるとも思っていませんでした。そして今日、50年以上も経て、オリジナル・キャストで続編を作ることができ、なおかつ、一作目と同じようにカンヌ国際映画祭で披露できたのは、まさに奇跡としか言いようがありません」
たしかに、フランス映画に限らずどこの映画界でも類をみないと言える。名作曲家フランシス・レイによる、あの“シャバダバダ〜”のメロディも有名な『男と女』が、カンヌでパルムドール(最高賞)を受賞したとき、このフランス的な洗練に満ちた大人のラブストーリーを、世界は熱狂的に讃えた。
そして53年後の2019年、再びカンヌの地で披露された新作『男と女 人生最良の日々』は、以前に勝るとも劣らぬ興奮をもって迎えられたのである。もっとも、バラ色の出来事ばかりだったわけではない。じつは一作目の続編にあたる二作目、『男と女Ⅱ』(日本公開1986年)は、批評家から酷評され、興行的にも失敗に終わっている。ルルーシュはこう回想する。
「二作目はまだ早すぎたのです。わたしは主人公たちがもっと年齢を経るのを辛抱強く待つべきだった。ただし三作目をいつか作ろうと思っていたわけではありません。きっかけは『男と女』の50周年を記念して、ふたたびジャン=ルイとアヌークとともにオリジナルを観直したことでした。映画を観ながら、彼らが楽しそうに囁きあったり、笑ったりしているのを見て、もう一度、彼らを映画のなかで再会させたいと思ったのです。