今回紹介するのは、シーズン5が配信された『ザ・クラウン』、韓国の人気TV番組『ユンステイ』、映画ゴッドファーザーの制作秘話を描いた『ジ・オファー/ゴッドファーザーに賭けた男』の3作品。ここで最新シーズンまで一気に追いつくもよし、韓国料理の作り方を学びながら豪華俳優陣の飾らない姿にほっこりするもよし、名画の知られざるエピソードを堪能するもよし、時間のある年末年始に一気見してエンタメチャージを!

BY KANA ENDO

王室メンバーそれぞれの苦悩が浮き彫りに。『ザ・クラウン』シーズン5

 シーズン4では、チャールズ皇太子とダイアナ妃の出会いから結婚、エリザベス女王とサッチャー首相の軋轢などが描かれたが、1990年代を描くシーズン5では、チャールズとダイアナの冷めきった結婚生活から別居までが描かれる。また、サッチャーに代わり新たに首相に就任したジョン・メージャーは、王室が所有する豪華ヨット、ブリタニア号の修繕費を国が負担することに疑問を呈し、エリザベス女王と対立する。国民はこれまでの君主制に疑問を感じ始め、新しい時代に即した王室のあり方を求め始める。また後にダイアナの恋人となるドディ・アルファイドとその父モハメド・アルファイドがいかに王室と関わりをもつようになったかも描かれている。

画像: ダイアナを『テネット』や『華麗なるギャツビー』に出演したエリザベス・デビッキが、チャールズを『ザ・ワイヤー』のドミニク・ウェストが演じる © NETFLIX

ダイアナを『テネット』や『華麗なるギャツビー』に出演したエリザベス・デビッキが、チャールズを『ザ・ワイヤー』のドミニク・ウェストが演じる
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 シーズン5ではキャストが一新し、前シーズンのキャストが持つ印象もしくは自身の持っている王室メンバーの印象との違いに戸惑うかもしれないが、それは杞憂に終わるだろう。ダイアナを演じたエリザベス・デビッキは容姿がそれほど似ていないにも関わらず、仕草を見事に習得し、まるでダイアナ妃本人が乗り移ったかのような演技を見せる。これまでのシーズン同様、再現性の高い衣装と相まって、新キャストの『ザ・クラウン』に引き込まれるのに時間はかからない。

 本シーズンの主題はチャールズとダイアナの結婚生活だが、他にもフィリップ王配とマウントバッテン伯爵夫人ペニーとの親密な友情や、マーガレット王女とピーター・タウンゼント大佐との再会など、王室メンバーそれぞれの想いが描かれる。とくに、1992年はエリザベス女王が即位40年祝うスピーチで「アナス・ホリビリス(ラテン語で恐ろしい年の意味)」と述べたように、チャールズとダイアナの別居、アン王女の離婚、アンドリュー王子の別居、そしてウィンザー城の火災など、エリザベス女王にとって、イギリス王室にとって辛い年となった。

 またチャールズは、結婚生活だけでなく皇太子という立場でも葛藤していた。一般的に40代半ばといえば働き盛りであるが、自分は待合室に放置された無用のお飾りのようだと自嘲する。ダイアナの暴露本の出版やTV出演、チャールズとカミラ夫人の電話盗聴など、執拗な報道や不確かな情報など徐々に加熱していくメディアの姿勢も問われる本作だが、エリザベス女王を象徴するブリタニア号が退役すると同時に、ダイアナはアルファイド家のクルーザーでバカンスを過ごすという描写は、いかにも英国ドラマらしい皮肉が込められたシーンだ。既にシーズン6で完結すると発表されており、最終シーズンへの期待が高まる。

画像: エリザベス女王をイメルダ・スタウントン、フィリップ王配をジョナサン・プライスが演じる © NETFLIX

エリザベス女王をイメルダ・スタウントン、フィリップ王配をジョナサン・プライスが演じる
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画像: Netflixシリーズ『ザ・クラウン』 シーズン1〜5独占配信中 © NETFLIX 公式サイトはこちら

Netflixシリーズ『ザ・クラウン』
シーズン1〜5独占配信中
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パク・ソジュンやチェ・ウシクの寝起き姿も拝めるほのぼのバラエティ『ユンステイ』

『ユンステイ』は、韓国人俳優として初めてアカデミー助演女優賞を受賞した、ユン・ヨジョンの名を冠したバラエティ番組だ。シリーズとしては3作目で、シーズン1・2は『ユン食堂』というシリーズ名で、インドネシアやスペインの小さな島でユン・ヨジョン自らがキッチンに立ち、他の俳優陣とともに韓国料理を供する食堂を運営するという企画だったが、コロナ禍で海外での撮影が困難に。ということで、韓国国内でこれまでの食堂に宿泊施設を加えたゲストハウスを運営する『ユンステイ』という企画になった。宿泊客は在韓1年未満の外国人で、韓国の伝統的な家屋「韓屋(ハノク)」に滞在し、韓国宮廷料理に舌鼓を打つ。

画像: 韓国伝統料理の作り方や基本の出汁のとり方などが学べ、韓国料理が作りたくなる演出も見事だ © CJ ENM CO., LTD, ALL RIGHTS RESERVED

韓国伝統料理の作り方や基本の出汁のとり方などが学べ、韓国料理が作りたくなる演出も見事だ
© CJ ENM CO., LTD, ALL RIGHTS RESERVED

 本作のみどころは、豪華な俳優陣が七転八倒するドタバタ感だ。『ミナリ』でアカデミー賞を受賞したユン・ヨジョンを筆頭に、数々の時代劇で王や将軍を演じてきたイ・ソジン、『新感染 ファイナル・エクスプレス』、『82年生まれ、キム・ジヨン』のチョン・ユミ、『梨泰院クラス』のパク・ソジュン、『パラサイト 半地下の家族』のチェ・ウシクと、韓国ドラマや映画で一度は見たことがある錚々たる顔ぶれだ。本シリーズから参加したチェ・ウシクは、一番若く新入りということで、ドライバー、ベルボーイ、ウェイターなど何でもこなさなければならず、常に走り回っているし、料理担当のチョン・ユミとパク・ソジュンが、煮えない小豆や牛肉のミンチと格闘する姿にハラハラする。プライベートでも仲が良いパク・ソジュンとチェ・ウシクがチョン・ユミをからかうシーンは抱腹絶倒必至。寝癖で爆発した髪のまま出演するなど、彼らの飾らない自然体に好感がもてる。

 大人気スターたちがこれほどまでに素の姿をさらけ出せるのは、プロデューサーの手腕によるところが大きいだろう。本作を手掛けるのは敏腕プロデューサーのナ・ヨンソク。『三食ごはん』など数々の人気バラエティ番組を製作した超有名PD(韓国ではプロデューサーのことをPDと呼ぶ)で、韓国でもっとも人気のあるPDの一人だ。韓国のスターニュースなどの報道によると、次シーズンはユン・ヨジョンに代わってイ・ソジンの名を冠した『ソジンの家(仮題)』という番組が制作されているとのこと。メキシコで撮影を敢行し、パク・ソジュン、チェ・ウシクの友人であるBTSのVが参加し、2023年春頃公開予定との情報も伝えられている。韓国文化を世界にアピールするとともに、韓国を代表する俳優たちの飾らない姿に親近感を覚えてしまう、韓国エンタメ界の手練さを実感する番組だ。

画像: カナダ出身のチェ・ウシクは外国人ゲストと流暢な英語でコミュニケーションを取る。他の出演者も英語を難なく話し、韓国俳優の層の厚さを実感する © CJ ENM CO., LTD, ALL RIGHTS RESERVED

カナダ出身のチェ・ウシクは外国人ゲストと流暢な英語でコミュニケーションを取る。他の出演者も英語を難なく話し、韓国俳優の層の厚さを実感する
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画像: 『ユンステイ』 U-NEXTにて配信中 © CJ ENM CO., LTD, ALL RIGHTS RESERVED 公式サイトはこちら

『ユンステイ』
U-NEXTにて配信中
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映画『ゴッドファーザー』が必ず見たくなる!『ジ・オファー/ゴッドファーザーに賭けた男』

 不朽の名作である映画『ゴッドファーザー』の製作舞台裏を描いたドラマ。パラマウント・ピクチャーズに入社したてのアルバート・S・ラディは、当時ベストセラーとなっていた小説『ゴッドファーザー』の映画化を任される。しかし、遅々として進まない脚本の執筆、予算におさまらない監督の演出、製作に後ろ向きな上層部からの横槍に加え、映画化に反対するマフィアからの妨害工作など問題は山積み。新米プロデューサーのラディは、助手のベティとともに、なんとしてでも映画を成功させようと奔走するのだが。

画像: ラディ(左)を『トップガン マーヴェリック』ルースター役のマイルズ・テラー、ベティ(中)を『テッド・ラッソ:破天荒コーチがゆく』キーリー役のジュノー・テンプル、監督のフランシス・コッポラ(右)を『ファンタスティック・ビースト』シリーズのジェイコブ役、ダン・フォグラーが演じた © 2022 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

ラディ(左)を『トップガン マーヴェリック』ルースター役のマイルズ・テラー、ベティ(中)を『テッド・ラッソ:破天荒コーチがゆく』キーリー役のジュノー・テンプル、監督のフランシス・コッポラ(右)を『ファンタスティック・ビースト』シリーズのジェイコブ役、ダン・フォグラーが演じた
© 2022 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

 誰もが一度は見たことや耳にしたことがある映画『ゴッドファーザー』だが、製作の裏側がこれほどまでにドラマティックで興味深いエピソードにあふれていたとは思いも寄らなかった。本作はアルバート・S・ラディの実体験を元にしているので、描かれる多くの出来事が実際に起きたことで、あの有名シーンは実はこうやって作られていたのかと答え合わせ的に楽しむこともできる。例えば、マイケル・コルレオーネがトイレのタンクに隠された銃を探すシーンに隠された秘密や、馬の首、シチリア撮影など、そうだったのか!と膝を打つ秘話にわくわくする。また、出演者のほとんどが実在の人物だが、彼らがモノマネではなく雰囲気を似せているのも功を奏している。アル・パチーノを演じたアンソニー・イッポリトは、当時のアル・パチーノの非常に神経質で自信のなさを巧妙に表現しているし、マーロン・ブランドにはまったく似ていないジャスティン・チェンバースも、劇中ではブラントつまりヴィト・コルレオーネに見えてくる。またリハーサルシーンは描かれるが、本番は劇中に登場しないのも巧い演出だ。

 とにかく製作の最初から最後まで問題続きだが、ラディはその人柄や機転のきかせ方でどうにか乗り切っていく。監督や美術や出演者など制作スタッフへのリスペクトを忘れず、なんとか実現してあげたいという想いがチームワークとなり、上層部やマフィアまで懐柔してしまう。彼らのひたむきな情熱と信念に、仕事とは本来こうあるべきだと再認識させられるだろう。ドラマ自体も非常によくできているが、映画の面白さを引き出し、もう一度見たいという気持ちにさせるのが素晴らしい。2022年は映画『ゴッドファーザー』が公開されてから50年。ドラマとともに映画も併せて楽しんで欲しい。

画像: 「自分たちのイメージが悪くなる」とマフィアは映画化に猛反対するが、思いも寄らない方法で、ラディは彼らを納得させる © 2022 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

「自分たちのイメージが悪くなる」とマフィアは映画化に猛反対するが、思いも寄らない方法で、ラディは彼らを納得させる
© 2022 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

画像: 『ジ・オファー/ゴッドファーザーに賭けた男』 U-NEXTにて見放題で独占配信中 © 2022 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED. 公式サイトはこちら

『ジ・オファー/ゴッドファーザーに賭けた男』
U-NEXTにて見放題で独占配信中
© 2022 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

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*今回紹介している作品の配信状況は2022年12月25日時点のものです。

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