圧倒的な存在感と、見る者を心地よく惑わせる曖昧な浮遊感が混在し、いま最も注目をあびる俳優、古川琴音。表現者としての根底にある心のよりどころとは──

BY JUNKO HORIE, PHOTOGRAPHS BY KAZUYA TOMITA, STYLED BY MAKIKO FUJII, HAIR & MAKEUP BY YOKO FUSEYA AT ESPER

画像: 古川琴音(ふるかわ・ことね) 1996年神奈川県生まれ。2020年のNHK連続テレビ小説『エール』の主人公の娘役で注目を集める。2022年にはNHKドラマ『アイドル』でテレビドラマ初主演。主な出演作に、2023年のNHK大河ドラマ『どうする家康』(千代役)、映画『リボルバー・リリー』など

古川琴音(ふるかわ・ことね)
1996年神奈川県生まれ。2020年のNHK連続テレビ小説『エール』の主人公の娘役で注目を集める。2022年にはNHKドラマ『アイドル』でテレビドラマ初主演。主な出演作に、2023年のNHK大河ドラマ『どうする家康』(千代役)、映画『リボルバー・リリー』など

 あどけなさが残る声と、まるで赤ちゃんのような愛らしい面差し。かと思えば、カメラの前に立つと一気に妖艶さが押し寄せる。ひと言では形容しがたい古川琴音の魅力──それは出演中のNHK大河ドラマ『どうする家康』で演じる歩き巫女・千代にも活かされている。いかつい武田勢の中で際立ち、戦国の世にひと筋の朱を差すような存在、千代。麗しき異物感をもつ彼女はどんな場でも決して埋もれない。「戦国時代に生きる女性ってこんなにも強かったのかと、想像をかきたてられるような役になっていたらうれしいですね」。

 日本人形のようなルックスにアジアの神秘性が香るが、芸事始めは幼い頃から習っていたバレエ。突出せずなじむ傾向になりがちな日本で、この類いまれな個性は多くのクリエイターに見つかり、映画『十二人の死にたい子どもたち』、第71回ベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞した『偶然と想像』、ドラマ初主演作『アイドル』など、役によってまったく異なる表情が引き出されている。「自分には個性がないと思っていたので、役に染まることに抵抗がないんです。そのぶんまわりの方々がこだわってくださり、いろいろな役がいただけるのかなって」と語ったあとで自己分析。「曖昧なものが好きなんです。白黒はっきりしないほうがいいというか。演じることも、仕事だと線引きして考えるのがすごく苦手。最終的には自分がどういう人になりたいか。それがこの仕事をやる意味につながっていると思います」。

画像: バレエで培われた長い手足と唯一無二の空気感で、モノトーンのシャツとスカートというシンプルなルックがひときわ輝く

バレエで培われた長い手足と唯一無二の空気感で、モノトーンのシャツとスカートというシンプルなルックがひときわ輝く

 そんな彼女の思慮深さを形成したのは恩師の教え。「中学時代の演劇部の顧問の先生から『風姿花伝』や古典芸能についても習い、当時はよくわかっていなかったのですが、今も忘れられないのが"守破離(しゅはり)"── 守って破って離れること。考えてみれば、私のお芝居の根底には守破離の教えがあるなと。守る=台詞を覚える。破る=自分なりに役を深める作業。離れる=いざ演じるときは自分がやろうと考えていたことも捨て、その時その場所に自分を投じる。破って離れてからじゃないと何かを伝え、感動させることはできないと思っています」。この教えは彼女の一生の宝となり、"守破離"しながら古川琴音の世界はとめどなく広がってゆくことだろう。

画像: シャツ¥71,500・スカート¥121,000・ブーツ¥176,000/sacai TEL.03-6418-5977 ネックレス(上)¥308,000・(下)¥694,100・リング(上)¥616,000・(下)¥68,200・ブレスレット(手前)¥253,000・(奥)¥253,000/Shihara SHIHARA TOKYO TEL.03-6427-5503

シャツ¥71,500・スカート¥121,000・ブーツ¥176,000/sacai
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ネックレス(上)¥308,000・(下)¥694,100・リング(上)¥616,000・(下)¥68,200・ブレスレット(手前)¥253,000・(奥)¥253,000/Shihara
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