TEXT BY CHIKAYO TASHIRO
往年の映画をモチーフにした傑作ロマンス
『恋人~あの日聞いた花の咲く音~』
韓国では昨年の下半期に放送されてとても人気を博し、数々の賞に輝いたドラマです。この作品は往年の名作映画『風と共に去りぬ』をモチーフに、それを1636年に起きた清の朝鮮侵攻事件、丙子の乱の時代に置き換えて歴史ロマンスドラマに仕上げました。
本当に構図が『風と共に去りぬ』でして、ドラマでは主人公が男性なので、いわゆるレッド・バトラーに当たるのがナムグン・ミン演じる男性です。やり手の商人で通訳でもあり、ケンカも強いのですが、斜に構えていて、戦に関しても我関せずでのらりくらりと捉えどころのない遊び人。でも、芯の部分には世の中への憤怒や正義感がある男。そんな彼が、男たちにちやほやされる少々高慢な両班(かつての特権階級)のお嬢様と出会い、肝心な好きな人からは振り向いてもらえず、強がってムキになってしまう彼女のことを面白がってからかっていくうちに、本当に愛するようになっていくのです。口では軽口をたたきながらも、陰では彼女のことを命がけで守っていく。そんなところが激しくかっこいい!表向きはひょうひょうとしているけど、心では誰よりも国や大切な女性のことを考えて行動するなんて、これはもう女子が大好きなキャラクターです。
そして映画でもヒロイン、スカーレットのたくましく生き抜く力が印象的でしたが、このドラマでも、世間知らずのお嬢様だったヒロインが、大変な目に合ってからは、“どんな状況下でも自分は生き残るのだ”という生への執念がたくましくて、そんな逆境に強いところも好感が持てました。とっても上手に韓国的な時代劇に換骨奪胎されていて、美しい映像で、ぐいぐいと引っ張って行く展開が素晴らしかったです。時代背景、政治背景もしっかりと描きながら、タイトル通り、主人公カップルに注力した内容で、最後まで見ごたえがあります。
■U-NEXTにて7/3より独占先行配信予定
■7/3にDVD-SET1、8/2にDVD-SET2、9/4にDVD-SET3(各¥14,740)を発売予定(※レンタルDVD同時リリース)。発売・販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
古典の名作小説を見ごたえある“復讐劇”に
『復活』
これは古典の名作小説『モンテ・クリスト伯』をモチーフにしています。友の裏切りによる冤罪で15年も離れ島の監獄で過ごさねばならず、そこで出会った博学な神父から様々なことを学んで島を脱出し、宝を手にして伯爵として身分を変え、かつて自分にひどいことをした者たちに復讐していくというのが原作。それを、ひとひねり、ふたひねりもして、見ごたえのある復讐劇に変貌させました。韓国では長らく“サスペンス”ジャンルは当たらないとされてきましたが、そんな概念を覆し、“復活パニック”と呼ばれる熱狂的ファンを生み出したほど。
幼いころの記憶をなくし、孤児として育ての親の元で成長して刑事となった主人公が、生き別れた双子の弟と再会しようというその時に、弟は自分と間違われて殺されてしまいます。怒りに燃える主人公は、父と弟を奪った者たちへの復讐のために、死んだ弟に成りすまし、身分を欺いて生きる決意をして犯人たちを追い詰めていきます。それゆえに、愛する女性がいるのですが、彼女を目の前にしながらも心を鬼にして別人を装わなくてはならない。一方の彼女の方も、愛する人が死んでしまったと思い込んでいるので、その悲しみを抱きながらもそっくりな男性の存在に戸惑い心を揺らしていくのです。この2人の間に流れる緊張感と哀切感がたまりません。
緻密に練られた脚本、演出効果、演技力、音楽、もう四位一体のすばらしさです。いろいろな小物やしぐさ、色合いなどにメッセージが込められているので、気軽には見られません。その代わり「見たな」という充実感が味わえるでしょう。このドラマの成功によって、この監督と脚本家コンビによる、『復活』に続く『魔王』『サメ』という復讐3部作が世に出ました。
■Amazon Prime Videoチャンネル「韓国ドラマ&エンタメChannel K」にて配信中
アメリカ映画原作の胸キュン!ラブコメ
『ファンタスティック・カップル』
こちらは1987年のアメリカ映画『潮風のいたずら』を原作にしたドラマです。傍若無人の高飛車セレブな人妻アンナとガテン系の純情男チョルスが繰り広げる、ラブ・コメディー好きにはたまらないドラマです。
まるで天敵のような出会いをしたアンナとチョルス。でもアンナが事故で記憶を失ったのをいいことに、チョルスは、今までの復讐としてこき使ってやろうと彼女を恋人だといって引き取り、3人の甥っ子たちがいる男所帯の家に連れて行くのですが、生活力ゼロのアンナはまるで疫病神のように、次々ととんでもないことをしでかしていきます。このドラマの勝因はとってもユニークで強烈なキャラクターたち。超タカビーだったゴージャス美人が、一転モンペ姿に髪振り乱し、ダサダサの格好になるのですが、それでも女王様キャラは変わらない、というハン・イェスル演じるとんでもヒロイン像が妙にかわいくて、彼女が放つ命令調の独特のセリフ「~のザマときたら」が流行語にもなりました。そしてガテン男を演じたオ・ジホの、お金にはせこいけれど、男らしく温かさのある人間味がジンジン胸にしみてきます。
『美男<イケメン>ですね』『ホテルデルーナ~月明かりの恋人~』『還魂』といったヒットドラマを生み出している、大人気の脚本家「ホン姉妹」(ホン・ジョンウン&ミラン)が手がけた作品で、漫画チックに始まりますが、途中からどんどん胸キュン度が高まります。大金持ちゆえに、真心で愛することにも、愛されることにも慣れていなかった、魔女のように恐れられていた女が、どんどん人間らしく変わっていく。彼女の強気の裏に見え隠れする寂しさにキューンとなり、鼻の奥がツーンとなる、ウェルメイドなラブコメ作品です。
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