日本における韓流ブームの立役者で韓流エンタメのスペシャリストである田代親世さんが、韓国ドラマの魅力をさまざまな切り口でご紹介。今回は、ヒロインをそれぞれの形で “守る男” に着目し、ドラマをセレクト!

TEXT BY CHIKAYO TASHIRO

呪縛から解き放つために孤軍奮闘
『魔女-君を救うメソッド-』

 この作品は、関わるとろくなことがないので「魔女」と呼ばれてしまう不吉な女性に片想いし、彼女を呪縛から解き放してあげようと、命がけで奮闘する一人の男性の長年の愛の戦いを描いたラブ・ミステリーです。『ムービング』や『照明店の客人たち』の原作漫画を手掛けた人気漫画家カン・プルのウェブトゥーンが原作です。

画像: 魔女と呼ばれる女性役ノ・ジョンウィ。© Showbox & Mr. Romance All rights reserved.

魔女と呼ばれる女性役ノ・ジョンウィ。© Showbox & Mr. Romance All rights reserved.

 主人公のドンジンは、統計学を学び、データマイナー(データ分析家)として一目置かれる活躍をしていたものの、ある日地下鉄で高校時代にひそかに思いを寄せていた女性を見かけます。実は彼女は、高校時代、彼女に思いを寄せたり愛の告白をした男たちはみんなひどい目に合うとして「魔女」と恐れられ避けられていたのでした。彼女がいまだに人を避けて閉じこもるように暮らしていることを知り、彼女を救いたいと、ドンジンは会社を辞め、彼女の向かいの部屋に住んで観察しながら、どうして彼女にかかわった男たちが不運に見舞われるのか法則を探っていきます。

画像: 主人公ドンジン役のジニョン。© Showbox & Mr. Romance All rights reserved.

主人公ドンジン役のジニョン。© Showbox & Mr. Romance All rights reserved.

 このドラマの面白いところは、迷信めいた出来事を統計学という論理的な数字で覆そうとしていく観点と、自分が満身創痍になってまでも彼女を救う法則を見つけ出そうとするドンジンの愛し方です。演じているのがGOT7のジニョンですが、この男、信じられると思わせる実直さや頼りになる感じがにじみ出ていてすごくいいんです。呪いにとらわれているお姫様を救い出そうとする王子のようで、最後には、そういう境地に行きつくのか!と感嘆しました。当の本人の知らないところでひたすら彼女のために孤軍奮闘している姿は「容疑者Xの献身」を彷彿させ、この自己犠牲の愛が尊いなと感じます。

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愛し方が異なる兄弟との三角関係
『私がいちばん綺麗だった時』

 ヤンピョンという自然豊かな地域を舞台に繰り広げられる、一人の女性と、彼女を同時に愛していく兄弟が繰り広げていく7年にわたる胸の痛む愛の物語。幼いころから恵まれない生い立ちで複雑な家族関係の中で育ってきたヒロイン。彼女の強さに見え隠れする、無邪気さと脆さが男たちの保護本能を刺激します。タイプの違う男性が一人の女性を巡る三角関係は韓国ドラマの定番ですが、このドラマではその男性たちを兄弟に据えたところが禁断のタブー感をさらにかき立てます。愛し方がまるで異なる2人。兄のジンは、大人の男性の包容力と自信を背景に、率直な告白と強引さで彼女を暗闇から救い出す王子のごとくに振る舞い、一方、弟は、年上の美しい教育実習の先生への憧れが恋心に変わり、やがて深い愛を抱きながら、常にナイトのように誰よりもヒロインに心を寄せて守っていくことになります。

画像: 兄ジン役のハ・ソクジン(右)と主人公イェジ役イム・スヒャン(左)。©2020MBC

兄ジン役のハ・ソクジン(右)と主人公イェジ役イム・スヒャン(左)。©2020MBC

 ダメだとわかっていてもどうしようもなく惹かれてしまう想い。頭では理解しても許すことができない複雑な気持ち。愛しているのに自信を失い卑屈になってしまう男心。どうしても手放せない執着。一筋縄ではいかないすれ違い。相手を思うがゆえに真実を言い出せず誤解していく親子の情など、男女間に留まらず、親子関係も丁寧に描かれ、繊細な心の機微が、説得力を持って胸に迫ってきます。そんな、切実で煮詰まった心を抱えた人々が緊張感あふれるやり取りを繰り広げていくのですが、光、緑、陶芸、ゆったりとした時間の流れ、虫の声、小川のきらめき、蓮の浮かぶ池、煌々たる月明かりに照らされた夜の湖などなど、情緒を豊かに広げてくれる要素がそこここにちりばめられているので、ある意味古典的なメロドラマが描かれてもしっくりきてしまうのです。

画像: 弟ファン役のジス(左)と主人公イェジ役イム・スヒャン(右)。©2020MBC

弟ファン役のジス(左)と主人公イェジ役イム・スヒャン(右)。©2020MBC

 そして、3人が一つ屋根の下に住んでいるゆえ、火種が家の中にあるから観ていて緊張感がハンパないんです。暗黙の了解で、危ういところで平衡を保ってきていた家族の平和。それぞれがそれを守ろうとするのですが、時に爆発してしまう抑えきれない熱情。そんな3人の間に漂う空気間がよくて、これぞ恋愛ドラマの醍醐味が味わえます。中盤で兄弟がまた違った姿に変化していくのがこのドラマの見どころ。関係性が微妙に変わった3人がどうなっていくのか、ますます緊張感が高まっていくのを堪能してください。

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スーパー仕事請負人が陰で支える
『ヒーラー ~最高の恋人~』

 チ・チャンウク扮する孤独に生きる仕事請負人の活躍と愛を描いたアクション・ラブロマンスです。神出鬼没、まるで軽業師のような身のこなしと先端技術を駆使してクライアントの依頼に完璧に応えるスーパー仕事請負人、コードネーム、ヒーラー。そんな彼が国民的人気のテレビ記者から受けた依頼は、ある女性記者のDNAをゲットすること。ヒーラーは仕事で彼女に接近するうち、彼女のことが気になっていきます。そして過去の因縁と隠された真実が明らかになっていくのでした。

画像: 主演の仕事請負人役チ・チャンウク(左)とテレビ記者役のパク・ミニョン(中)。Licensed by KBS Media Ltd. ©2015 KBS. All rights reserved

主演の仕事請負人役チ・チャンウク(左)とテレビ記者役のパク・ミニョン(中)。Licensed by KBS Media Ltd. ©2015 KBS. All rights reserved

 このドラマのツボは、ヒーラーが、ヒロインのそばにいるために彼女の後輩記者として働くことになるのですが、彼女の前ではヘタレな部下として振る舞いながら、陰ではいつも彼女を助けてあげるというギャップ萌え必至なところ。また、ヘタレな部下を必死で守ろうとするヒロインと彼女を助けるヒーラーという守り守られの関係性となり、そのうち彼女は、顔を見せずに気配だけを感じさせるヒーラーに惹かれていくという乙女のロマンが炸裂する展開になっていきます。

画像: チ・チャンウク(右)とパク・ミニョン(左)。Licensed by KBS Media Ltd. ©2015 KBS. All rights reserved

チ・チャンウク(右)とパク・ミニョン(左)。Licensed by KBS Media Ltd. ©2015 KBS. All rights reserved

 ヒーラーを演じるチ・チャンウクが、普段はクールなのに、ヘタレ部下になるととたんに可愛くなるという2つの顔を見せながら、とびっきりかっこいい人物像になっています。家族の縁が薄く、人と深くかかわらないように生きてきたヒーラーが、同じ境遇ながらも明るく生きているヒロインに惹かれていく過程は胸キュンで、時にはこれは反則でしょう~と思うほどのチ・チャンウクの甘々っぷりに頬がとろけそうになります。このドラマでチ・チャンウクに落ちる女性が続出することでしょう。ヒロインを演じたパク・ミニョンも、ボーイッシュで非常に愛らしく、お似合いのカップルです。そこはかとない切なさを漂わせながらも明るさのあるドラマなので爽快感があります。

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田代親世 韓流ナビゲーター 
韓流解説、韓流イベント司会の第一人者。公式サイト「田代親世の韓国エンタメナビゲート」やYoutube「ちかちゃんねる☆韓流本舗」「韓ドラ・マスター親世と尚子の感想語り」などで韓流情報を発信しているほか、会員制のコミュニティ【韓流ライフナビ】を主宰。ツアーやイベントを企画・開催している。


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