BY ELIZABETH PATON, TRANSLATED BY CHIHARU ITAGAKI

ヴィヴィアン ウェストウッド
ベテランの底力を見せたヴィヴィアン ウェストウッド
ヴィヴィアン ウェストウッドのフィナーレは、いかにもこのブランドらしかった。マッチョな若いアクロバット演者の肩車に乗って登場したデザイナーは、あけすけなスローガンの書かれたTシャツと、ペインティングをほどこしたウェアに身を包み、政治的メッセージを訴えた。
ショーの始まりを告げたのは、ランウェイの奥に設置されたカラフルで巨大なベビーサークルの中での、英国の政治情勢をテーマにしたラッパーのパフォーマンス。続いて、男女のパフォーマーが跳ね回ったり側転をしたりしながらランウェイに躍り出てきた。彼らの服には、ヴィヴィアンの大好きな社会問題にまつわるプリントが。ゴミがカラフルなフィッシュネットタイツに包み込まれてモデルの脚にまといついていたり、サテンのボディスーツのなかで跳ね回っていたり。モデルの足もとを飾るのは、ペットボトルの容器をつぶしてつくったスリッパだ。

ヴィヴィアン ウェストウッド

ヴィヴィアン ウェストウッド
PHOTOGRAPHS BY TOM JAMIESON FOR THE NEW YORK TIMES
ピンストライプのスーツ、紙でできた王冠、スローガンのプリントやジェンダーレスなコルセットガウン。フォーマルで貴族的な装いを再構築しようとするヴィヴィアンのランウェイショーは、いつだって既得権益者に対する反撃の狼煙のような存在だ。
今回のロンドン・コレクションでショーを行った若いデザイナーの多くにとって、ヴィヴィアンは風変わりで法外、かつはっきりとしたインスピレーションを与えてくれる存在だ。ロンドンでいちばん有名なパンク・クイーンは、いまだ業界に多大なる影響を与え続けている。