NYのアパートで手作りされる
「ルー ダラス」の幻想的な服

The Designer Making Dreamy Baroque Clothing in Her New York Apartment
ファッションブランド「Lou Dallas(ルー ダラス)」を手がけるラファエラ・ハンリー。彼女は、デッドストックの素材を美しくパンキッシュな服へと変身させる

BY MERRELL HAMBLETON, PHOTOGRAPHS BY NICHOLAS CALCOTT, TRANSLATED BY CHIHARU ITAGAKI

 2013年に、ハンリーは「ルー ダラス」を立ち上げた。ブランド名はリュック・ベッソン監督の映画『フィフス・エレメント』(’97)でブルース・ウィリスが演じた役、コーベン・ダラスから。「ルー」は、“ちょっとフランス風で、中性的な感じがする”ところが気に入って命名した。ブランド開始以来、彼女は型にはまらない道を切り拓いてきた。デリケートで幻想的なルックの数々は、デッドストックの布地や廃材からつくられている。「古着って大好き」とハンリー。「リメイクすれば妖精のお姫さまにもなれるから」。だが、それはめちゃくちゃなおとぎ話だ。その世界では、シンデレラは舞踏会に行くのをさぼり、森の中で開催されるパンクバンドのライブへ向かう。そのドレスは、途中でいばらの棘に引き裂かれてズタズタになっている。

画像: アトリエにいるハンリー。「服づくりはだいたい自分の手でやっているわね」と、自らの作品にラベルやボタン、刺繍を縫いつけながら話す ほかの写真もみる

アトリエにいるハンリー。「服づくりはだいたい自分の手でやっているわね」と、自らの作品にラベルやボタン、刺繍を縫いつけながら話す
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 反消費宣言も守ってきた。ハンリーのコレクションの大部分は、アッパー・イースト・サイドにある内装材のショールームからもらってきた余り布でつくられている。しかし最近では、このやり方の限界に直面し始めている。「最新コレクションでは、寄付された布地だけを使ってみたの」と彼女は言う。「これはコンセプトのある挑戦だったから、やってよかったと思う。だけどすごく限界のあるやり方だった。布地が傷んでいる可能性もあるわけだから」

画像: この1組の袖部分は、友人であるスタイリストのステラ・グリーンスパンからもらったもの。「ゴミあさりをするのは好きよ、私の制作過程の一部ね」とハンリー。「いつも素材を貯めこんでいるの」 ほかの写真もみる

この1組の袖部分は、友人であるスタイリストのステラ・グリーンスパンからもらったもの。「ゴミあさりをするのは好きよ、私の制作過程の一部ね」とハンリー。「いつも素材を貯めこんでいるの」
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 彼女の2019年春夏コレクション、「ルー ダラス・ウォーター ボウ」は、NY・バワリーにある聖マルコ聖堂にて発表された。このコレクションのために、ハンリーはルー ダラスの空想上の物語を考えていた。「サウス・ストリート・シーポートの海面から現れた人魚が、NYをウロウロする話なの」と彼女。そして改善点もいくつかある。落ち着いた茶色や緑色の、空気をはらんだ美しいメッシュのアイテムには、虹色のタフタやきつくひだの寄せられたラッフル、立体的なリボン飾りといったアクセントが。オーバーサイズのテーラードジャケットには、上質で宝石のような光沢感のベルベット地をパッチワークして、切れ込みを入れた。

「4ヤード(3.66m)くらいの布地を買ったと思う」とハンリーは言っているが、そこそこ大きな変化だ。視野が広がり、野心も育っているというシグナルでもある。「今回のコレクションには、最近のトレンドの流れをより反映してみました」と彼女は言う。「ひとつしか芸風がないわけじゃない、トレンドも意識できるんだってことを示さなきゃと思って」

 本人も認めているように、ハンリーは悩んでいる。一点物を製作するというアートスクール的なファッションへのアプローチと、もっとスケールアップしたいという願望との板挟みにあっているのだ。「今の私は、まるで2つのドアの間で立ちすくんでいるみたい。ビジネスをしたいのだから、”ドアA”の方へ向かわなきゃってわかっているのに」と彼女は言う。そうは言っても今のところ、彼女がファッションのメインストリームで生き残るためにしようとしている譲歩は、比較的小さなものだ。「今回のコレクションは、まだ、完全に一時の気の迷いってことになりそうね」

 

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