フランス生まれの日本酒が三ツ星レストランなどで扱われ、話題となっている。フランス人蔵元に、日本酒に対する思いを聞いた

BY KIMIKO ANZAI, PHOTOGRAPHS BY SHINSUKE SATO

 インタビューした日は、“平成”最後の4月30日。グレゴワール・ブッフは満面の笑みを浮かべてこう言った。「平成最後の日に日本にいられてうれしいよ。じつは昨年の7月、新しく即位される天皇陛下がフランス・リヨンにいらして、ある日本料理店で『雷』の燗酒を口にしてくださったそうなんだ。友人のソムリエがお出ししたんだけど、光栄のひと言に尽きるね」

画像: グレゴワール・ブッフ(GRÉGOIRE BOEUF) ランス・アヌシー生まれ。父が製薬会社を経営していたことから、父の会社を手伝っていたが、2013年に日本を旅行し、日本酒と出会ったことで転機を迎える。鳥取の梅津酒造で日本酒づくりを学び、2017年に「昇涙酒造」を立ち上げる

グレゴワール・ブッフ(GRÉGOIRE BOEUF)
ランス・アヌシー生まれ。父が製薬会社を経営していたことから、父の会社を手伝っていたが、2013年に日本を旅行し、日本酒と出会ったことで転機を迎える。鳥取の梅津酒造で日本酒づくりを学び、2017年に「昇涙酒造」を立ち上げる


 彼はフランス初の本格的酒蔵「昇涙酒造」のオーナーで、「雷」は彼の酒蔵の銘柄のひとつ。この4月から日本にも輸入されるようになった。現在、「昇涙酒造」が展開するのは「暁」、「風」、「浪」、「雷」、「一心」の5銘柄で、そのいくつかは現在フランスの「トロワグロ」、「ベルナール・ロワゾ―」、「ピラミッド」といった星つきレストランでもオンリストされている。

画像: (左から) 「LAVAGUE 風 2017BY」 <1440ml>¥8,400、<720ml>¥4,600 兵庫県産山田錦使用。軽やかで風のように繊細な味。常温からぬる燗で 「LAVAGUE 浪 2016BY」 <1440ml>¥6,600、<720ml>¥3,600 鳥取県産玉栄使用。ハチミツを思わせる甘みとコク 「LAUBE 暁 2017BY」 <1440ml>¥6,600、<720ml>¥3,600 鳥取県産山田錦使用。優しい甘みと酸味。お燗がおすすめ 「LETONNERR 雷 2016 BY」 <1440ml>¥6,600、<720ml>¥3,600 鳥取県産玉栄使用。芳醇でコクのある味わい。熟成感も感じる

(左から)
「LAVAGUE 風 2017BY」<1440ml>¥8,400、<720ml>¥4,600
兵庫県産山田錦使用。軽やかで風のように繊細な味。常温からぬる燗で
「LAVAGUE 浪 2016BY」<1440ml>¥6,600、<720ml>¥3,600
鳥取県産玉栄使用。ハチミツを思わせる甘みとコク
「LAUBE 暁 2017BY」<1440ml>¥6,600、<720ml>¥3,600
鳥取県産山田錦使用。優しい甘みと酸味。お燗がおすすめ
「LETONNERR 雷 2016 BY」<1440ml>¥6,600、<720ml>¥3,600
鳥取県産玉栄使用。芳醇でコクのある味わい。熟成感も感じる

 ブッフが日本酒に興味を持ったのは2013年の夏のこと。父や従兄と日本を旅行中に奈良の「風の森」のしぼりたて酒に出会い、たちまち魅了されたという。「帰国する時、スーツケースに日本酒を詰め込んだよ(笑)。その後、日本酒の輸入業をしているフランス人と知り合い、日本酒に関するさまざまなことを学んだ。すると彼が、当時日本からフランスに来ていた鳥取の梅津酒造の梅津社長を紹介してくれて。社長から酒蔵での修行の誘いを受け、日本できちんと酒づくりを学ぼうと決心したんだ」

 それまで、彼は実験的に日本酒を少量だけつくっていた。発酵の室もなかったため、PCのルーターの上で麹を発酵させたこともある。「でも、その酒は極めてまずかった(笑)。器具は大切だと痛感したよ」。「梅津酒造」では日本酒づくりを一から学び、発酵の何たるかを突き詰めて考えたという。そしてたどり着いたのは、「発酵とは、パン、ワイン、味噌、醤油など、人々の生活になくてはならない、人を幸福にするもの」という考えだった。

画像: 現地の酒蔵は、法律の関係で床や壁はコンクリートにしなくてはならないが、室や甑、舟場など、日本と変わらない設備が整っている。蔵の設立当初から2018年の酒造りまで杜氏を務めた若山健一郎さん(左)、現在の杜氏である田中光平さん(右)らとともに、この地ならではの日本酒をつくる COURTESY OF LES LARMES DU LEVANT

現地の酒蔵は、法律の関係で床や壁はコンクリートにしなくてはならないが、室や甑、舟場など、日本と変わらない設備が整っている。蔵の設立当初から2018年の酒造りまで杜氏を務めた若山健一郎さん(左)、現在の杜氏である田中光平さん(右)らとともに、この地ならではの日本酒をつくる
COURTESY OF LES LARMES DU LEVANT

「僕がつくる日本酒もそうありたいんだ。ていねいに仕込んで、人においしいと喜んでもらいたい。日本とフランス、土地は違ってもおいしい日本酒はつくれると信じている」。現在は、初代杜氏である若山健一郎の哲学や手法を受け継いだ杜氏の田中光平とふたり、ローヌ・アルプの地で日本酒づくりに精を出す。

 米は鳥取の山田錦、五百万石、雄町などをセレクト。つくりたい味をきちんと考えて酒米を選んでいる。肝心の水は、アルプスの雪解け水を源流とするローヌ・アルプの天然水。地下の岩場を流れてくる間にほどよくミネラルが抜け、やわらかになって、いい仕込み水になるという。

画像: 「KIMOTO 一心 2016 BY」 <1440ml>¥6,800 辛口で、米のうまみをしっかり感じる。60℃以上のお燗で。昇龍酒造の日本酒は「日本橋 髙島屋」や「大阪 髙島屋」などでも販売。吉祥寺 「にほん酒や」 でも楽しめる

「KIMOTO 一心 2016 BY」<1440ml>¥6,800
辛口で、米のうまみをしっかり感じる。60℃以上のお燗で。昇龍酒造の日本酒は「日本橋 髙島屋」や「大阪 髙島屋」などでも販売。吉祥寺「にほん酒や」でも楽しめる

 最後に、彼に「昇涙酒造」の名の由来を聞いてみた。「“昇”は日が昇る国、つまりは日本のこと。“涙”は、パリで日本酒の普及に貢献された故・黒田俊郎さんの著書にある『酒は酵母の最後の涙』という言葉から。我ながらいい名前だと思うよ。いつも日本と繋がっているように思えるからね」

問い合わせ先
酒のはしもと
TEL. 047(466)5732

昇龍酒造(Les Larmes du Levant)

 

This article is a sponsored article by
''.