BY MIKA KITAMURA, PHOTOGRAPH BY SHINSUKE SATO
儚(はかな)く舌の上で溶けていくかき氷。ふわふわ、さくさく、とろーり。メレンゲや焦がしレモン、シブーストのクリーム、トリュフ……。かき氷の世界では無縁だったフレンチスタイルの味が、ふわっふわの氷を彩っている。
ミシュランガイド二ツ星のレストラン「フロリレージュ」の川手寛康シェフが、同店のシェフ・パティシエの堀尾美穂さんとともに、フランス菓子のパティシエが作るかき氷の店「あずきとこおり」を開いた。おもなメニューはかき氷とフレンチトースト。カウンターの目の前で作ってくれる。
もともとフランス菓子(郷土菓子やホームメイドスイーツ以外)は、手を加えた食材を何種類も重ねて仕上げるもの。いわば、味の足し算だ。堀尾シェフのかき氷も、さまざまな味わいと食感を複雑に重ねて味を構築する。
土台になるのは日光「松月氷室(しょうげつひむろ)」の天然氷。真冬の寒さを利用して、山の湧水をゆっくりゆっくり凍らせる。削れば、天女の羽衣のようにふわりと器に舞い落ち、重なり合う。定番メニュー「あずきとメレンゲ」には、自家製練乳と、メレンゲをパウダー状にして生クリームと合わせたメレンゲクリーム、炊いた小豆、わらび餅をイメージしてシルキーなやわらかさに仕立てたお餅。仕上げにメレンゲをたっぷりのせる。メレンゲのさくさく感、お餅のとろりとした口あたり、小豆のプチッとした食感。風味とテクスチャーの違いで飽きさせることがない。一般的なかき氷とは一線を画している。
かき氷の魅力とは?と問えば、「自由自在にアレンジできて、可能性は無限大。それに気づいたときには、すでにかき氷にハマっていました」。難しい点は、温度が低いので味と香りが伝わりにくいこと。味の奥ゆきが出にくいから、うま味や香りをしっかりきかせる。お客の前でメレンゲに焼き目をつけて香ばしさを演出したり、風味のインパクトが強いアマゾンカカオを使ったり。レモンは焦がすことで風味を深めている。
ネットで、ひとり50分の枠を予約できる。「かき氷屋さんはゆっくりできないところが多いから、時間と空間も存分に味わってほしい」。夏はマンゴーや桃、赤紫蘇などが登場すると聞けば、ヘビロテ確実。冷たい贅沢を満喫しよう。
あずきとこおり
住所:東京都渋谷区代々木1-46-2 グランデュオ代々木1F
営業時間:[木・金曜]12:00~17:00、[土・日曜]11:00~19:00、[月曜]11:00~17:00
定休日:火・水曜
※予約は公式サイトから
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