BY YUKIKO HIRANO
【今月の野菜とお酒:水茄子とプロセッコ】
世界中で1,000種類以上あると言われる茄子だが、たっぷりとした水分をたたえ、果物を思わせる甘味のある水茄子は、世界に誇れる茄子の王様だ。「水茄子と言えば、まず思い浮かぶのは糠漬け。水茄子を手で引き割きながらお酒を飲むのは、夏ならではの愉しみです。そしてぜひ試してもらいたいのが揚げ物。揚げ茄子の美味しさは日本人なら誰もが知るところですが、水茄子で作ってみれば別次元の料理に。カリカリの衣に包まれたとろとろの身からは、茄子の汁が滴り落ちる。熱々をほおばり、火傷しそうになりながら、冷たいプロセッコで口の中を冷やす──これぞ、夏の至福のひとときです」(平野さん)

イタリア産スパークリングワインの一種であるプロセッコが、みずみずしいフルーツのような水茄子の美味しさを一層際立たせてくれる
レシピ1:水茄子のフリット
ひとくち噛んだときにジュワッと汁があふれるように、大ぶりに4等分に切るのがコツ。揚げたてのところに生ハムをのせて、脂が溶けてきたところをがぶりとやる。むいた皮は素揚げにし、セージも一緒にフリットに。水茄子1個でプロセッコが1本空いてしまいそう。

「オリーブオイルを加えた衣は、失敗なくカリッと揚げられます」(平野さん)
<材料 2人分>
水茄子1個、薄力粉大さじ2、オリーブオイル大さじ1、水30〜40ml、セージ2枝、生ハム適量、揚げ油適量
<作り方>
1 水茄子はへたを切り落とし、4等分にし、皮をむく。
2 ボウルに薄力粉とオリーブオイルを加え混ぜてから、水を加えてさらに混ぜる。
3 油を140〜150度に熱し、茄子の皮を入れて素揚げする。3〜4分かけてカリッとするまで揚げる。揚げ油を170度にあげ、水茄子、セージを衣にくぐらせて揚げる。衣が少し色づくくらいを目安に3〜5分かけて揚げる。
4 生ハムと共に盛り合わせ、茄子に生ハムをのせていただく。
レシピ2:水茄子のマスタード和え
生の水茄子は、梨のような清涼感のあるほんのりとした甘さが味わえる。手で割いたら、やさしく塩揉みしてディジョンマスタードで和えれば、酸味の効いた辛子和えに。たっぷりのみょうがと青じそで、夏らしい香りとシャキッとした歯ごたえも加えよう。

「ディジョンマスタードは辛さを加えるのではなく、酸味を加える調味料。これで野菜を和えるだけで、ワインのための簡単浅漬けになります」(平野さん)
<材料 2人分>
水茄子1個、塩少々、ディジョンマスタード大さじ1、オリーブオイル大さじ1、醤油小さじ1、みょうが1個、青じそ5枚
<作り方>
1 水茄子のヘタを切り落とし、包丁で切り目を入れて、食べやすい大きさに手で割く。みょうがは小口切り、青じそは千切りにする。
2 水茄子を塩でもやさしく揉む。少し置いてしんなりとさせる。絞りすぎないように軽く水気を絞る。
3 ディジョンマスタード、オリーブオイル、醤油で水茄子を和え、みょうが、青じそを加え混ぜ、器に盛る。
【今月のお酒セレクト:ZAGO procecco on the less(ザーゴ プロセッコ オン ザ レス)】

PHOTOGRAPHS: COURTESY OF YUKIKO HIRANO
プロシュートのお供としてもおなじみのプロセッコ。価格が手頃なのはいいが、品質はピンキリだ。「シャンパーニュ好きの私にとっては正直、触手の動かない泡なのですが、ZAGOは信頼を置いているプロセッコです。800年代の伝統的製法で自然酵母を使い、瓶内二次発酵。“オン ザ レス”とは澱引きをしていないという意味。発酵を継続させることにより、リンゴや梨のような豊かな風味が漂います。果物のような水茄子に合わせるのが、今年の夏のお気に入り」(平野さん)
平野由希子
素材を生かしたシンプルでおいしい料理に定評のある料理家。書籍や雑誌、広告で活躍するかたわら飲食店のプロデュースや商品開発も手がける。日本ソムリエ協会認定ソムリエで、ワインバー「8huit.」のオーナーでもある。ワインと料理のペアリングが楽しめる料理教室も主宰。公式サイトはこちら