TEXT & PHOTOGRAPHS BY HIROYA ISHIKAWA

ここ数年、クラフトビール、クラフトジン、ナチュールワインなど、小規模生産で丁寧にこだわって作られたアルコール類が人気を集めている。こうしたお酒にハマる人たちが最後にたどり着くと言われているのが、メスカルと呼ばれるメキシコの蒸留酒だ。
メスカルはテキーラと同じく、原材料にアロエに似た多肉植物アガベを使用。テキーラに使われるアガベがブルーアガベのみとされているのに対し、メスカルは野生のアガベであれば特に指定はない。実際に50種類以上がメスカルの原材料として使われ、そのうちエスパディンと呼ばれる品種が8割ほどを占める。

「クラセアスール・メスカル・ゲレロ」。見た目は、ほのかに麦わら色を帯びた透明色
実はテキーラはもともとメスカルのひとつだったが、シャンパーニュ地方でつくられるスパークリングワインがシャンパンと呼ばれるように、テキーラ地方でつくられるメスカルがテキーラと呼ばれ、区別されるようになった。
メスカルの生産量はテキーラの10分の1にも満たないにも関わらず、蒸留所の数はメルカルのほうが多く、テキーラの144か所に対して640か所ほど。それはつまり蒸留所ごとの生産量がかなり少ないということであり、銘柄ごとの生産本数も限られている。
そんな希少なお酒メスカルの新商品「クラセアスール・メスカル・ゲレロ」が日本に上陸した。手がけているのは、メキシコ初のラグジュアリーブランドとしてプレミアムなメスカルやテキーラを生産、販売するクラセアスール。1997年に創業し、昨年創業25周年を迎えたブランドで、日本で本格的に始動したのは2020年の夏。

「クラセアスール・メスカル・ゲレロ」(750ml)¥38,500
創業者は、メキシコ中部のハリスコ州グアダラハラで生まれ育ったアルトゥーロ・ロメリ。世界にメキシコの文化や産地の美しさを伝えるような製品を作ろうと、地元でブランドを立ち上げた。
ロメリは現地の人たちの暮らしを豊かにすることも目標に掲げ、工場や職人養成学校を作ったり、デキャンタ(ボトル)製作に携わるスタッフの多くに女性を採用するなど、社会貢献につながる形でブランドを運営している。
ブランドを象徴するのが、現地の職人が製作する陶器のデキャンタだ。「クラセアスール・メスカル・ゲレロ」のデキャンタのデザインに込められているのは、祖先の知恵、自然の癒し、メキシコの戦う女性への敬意。色は古くから神聖なものとして扱われてきたジェード石を表している。そして、表面に施された4枚の花びらは、古代メキシコの暦石の中で宇宙の源を表す”第5の太陽”をかたどったもの。ハンドメイドのため、よく見るとひとつひとつの表情が微妙に異なる工芸品となっているのも特徴だ。

キャップの製作には、最低でも3日を要する
キャップはゲレロ州の伝統工芸品として知られるオリナラ漆器の技術を使って手作りされている。これは古代よりメキシコの女性が使っていた、木の実をくり抜いて作られるヒカラと呼ばれる器から着想を得たもの。絵柄には古代メキシコ文化で神の伝達者として信じられ、幸運の象徴でもあるハチドリが用いられている。
存在感たっぷりの個性的なデザインのため、飲み終わったあとは花瓶やキャンドルホルダーなどインテリアアイテムとして楽しむ人も多い。

中目黒のバー「緑青」。「クラセアスール・メスカル ・ゲレロ」をストレート1杯(30ml)4000円で楽しむことができる
肝心の味わいはどうだろう? 原材料に使われているのは、ゲレロ州の高地で育った野生のパパロテアガベ。このアガベはメスカル総生産のわずか1.4%ほどの希少な品種だ。
ブランドのテイスティングノートによれば、アロマはグレープフルーツスキン、フレッシュウッド、ローズマリー、ピーナッツオイル、ほのかにバターやデイジーの香り。テイストはフレッシュウッド、海藻、レモンジュース、ペッパー、ほのかなタバコの味わい。
実感としてはクセが少なく、スモーキーでありながら酸味もあり、時間が経つとカカオのような香りも感じられた。昔ながらの伝統的な製法で作られているだけあって、現地古来の空気を内包したかのようなプリミティブな味わいだ。
デキャンタを購入する以外にバーでも飲むことができる。例えば、中目黒にあるクラセアスール系列のバー「緑青(ろくしょう)」では「クラセアスール・メスカル・ゲレロ」のほか、同ブランドの「クラセアスール・メスカル・ドゥランゴ」もラインナップ。雰囲気の良い空間で、希少なメスカルをゆっくり嗜んでみては?
問い合わせ先
クラセ・アスール・アジア
TEL. 050-3171-8473
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