BY KIMIKO ANZAI
レモンやマンゴー、パッションフルーツなどの香りが、グラスの中から次々と顔を出す。フレッシュな酸味と優しいミネラル感。「クラウディー ベイ ソーヴィニヨン ブラン 2023」をひと口飲んで感じるのは、体にすっと馴染むような清涼感だ。次第に肩の力が抜け、ホッとするような安心感に包まれる。
「クラウディー ベイ」は1985年にニュージーランド・マールボロ地区(南島)に設立されたワイナリーで、高品質で洗練された味わいから世界的評価が高い。特に同社のソ―ヴィニヨン・ブランは、1991年に権威あるワイン専門誌『ワインスペクテイター』の”世界のワイン100”においてトップ10入りを果たしたことでワイナリーの名を世界中に知らしめ、以来、ニュージーランドワインを牽引してきた。
今回リリースされた「クラウディー ベイ ソーヴィニヨン ブラン 2023」について、テクニカルディレクターのジム・ホワイト氏は語る。
「2023年は、"イージーでリラックスした年"でした。一年を通じて天候に恵まれ、凝縮感のあるブドウが収穫できました。飲んでみると、まろやかでどこか明るいフレーバーを感じませんか? 私たちは、ボトルの中にソーヴィニヨン・ブランの風味をそのまま詰めることができたと満足しています」。だが、これもホワイト氏をはじめとするワイナリースタッフの日々の努力があってのもの。ホワイト氏は「畑での作業が何より大事」と、自身も畑で作業をすることが多いという。ブドウの成長を注意深く見守りながら栽培を行っているのだ。
「ワインは、素直にテロワールを語ります。自分がどんな土地で育ったのか、どう大切にされてきたかが如実に味に出る。だから、私たちは決して妥協してはいけないのです。今、私たちがうれしく思うのは、世界のワインのひとつとして"マールボロのソーヴィニヨン・ブラン"というカテゴリーができたこと。『クラウディー ベイ』の誇りでもあります」とホワイト氏は笑顔を見せた。
また、テロワールについて、こんな話もしてくれた。"ニューワールド"であるニュージーランドは、周知の通り先住民族のマオリと入植者の子孫たちが共存する国で、マオリ文化が大切に守られていることでも知られる。「クラウディー ベイ」でもマオリのスタッフは多く、「テ・ココ」(マオリ語で「クラウディー ベイ」の意)という名のワインもあるなど、マオリの文化を尊重している。自らもマオリの言葉を日々の中で学んでいるというホワイト氏は、こんな言葉を教えてくれた。
「マオリには"トゥランギワイワイ"という言葉があるのですが、これは"あなたのいる場所"という意味だそうです。マオリの人々には水や海、森などの自然をリスペクトし、生きているものとして捉えるという概念があります。"あなたのいる場所"という言葉は、テロワールの概念と共通するのではないかと感じ、私はこの言葉に深く共鳴しました。美しいワインは自然の中から生まれます。私たち人間は、なにより自然と共存しなくてはと、強く思うのです」。
「クラウディー ベイ ソーヴィニヨン ブラン 2023」から感じられるのは、自然の中からそのまま生まれてきたような透明感とのびやかさ。マールボロのテロワールをそのまま映し、この地のワインであることを物語る。そのピュアな味わいは、週末、親しい人々とともに過ごす時間を、より豊かなものにしてくれるに違いない。
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