季節の野菜が持つ本来の美味しさを引き出すことを知り尽くしている料理家・平野由希子さんが、いま食べたい野菜で作る魅惑のお料理と、相性のよいお酒のペアリングを、時代のトレンドに合わせた視点で提案。連載第29回は、夏本番を迎える食卓にぴったりな、とうもろこし&ビールのペアリングが登場!

BY YUKIKO HIRANO

画像: 夏はとうもろこしとビールで乾杯!

夏はとうもろこしとビールで乾杯!

 日本の夏には、とうもろこしの存在が欠かせない。夏休み、夏祭り、花火大会……子どもの頃、ゆでたてのとうもろこしに歓喜の声をあげた人も多いだろう。「大人がとうもろこしを楽しむのなら、ちょっと頑張って揚げてみませんか? とうもろこしのフリットは格別のごちそう。ビールと合わせたら最高です。少々手間はかかりますが、その甲斐がありますよ。もう一品は私の定番、とうもろこしとスペアリブのスープ。材料も作り方もとてもシンプルですが、とうもろこしの芯からは驚くくらいおいしい出汁が出ます。冷たく冷やしてもいいし、お酒を飲んだ時の締めにもいいですね」(平野さん)

レシピ1:とうもろこしのフリット

 とうもろこしを板状にして、カリっとした薄衣で揚げる。夏だからこその揚げ物には、とっておきのクラフトビールを合わせてぐびり。 

画像: とうもろこしならではの甘味と、軽やかな香ばしさがビールを誘う

とうもろこしならではの甘味と、軽やかな香ばしさがビールを誘う

<材料 2~3人分>
とうもろこし1本、薄力粉大さじ2、オリーブオイル大さじ1、水30〜40ml

<作り方>
 蒸し器に水を入れ、皮付きのままのとうもろこしを入れて中火にかけ、沸騰してから10分を目安に蒸す。蒸しあがったら、冷蔵庫に入れて1時間以上冷やす。蒸す代わりに、ゆでる、またはレンジ加熱してもいい。
 長さを3等分にし、実が板状になるように切り落とす。
 ボウルに薄力粉、オリーブオイルを入れて混ぜてから、水を加え混ぜる。
 2のとうもろこしを3にくぐらせて、180度の油で揚げる。

画像: 芯のキワに包丁を入れる。加熱後、冷ますことでバラバラになりにくい

芯のキワに包丁を入れる。加熱後、冷ますことでバラバラになりにくい

レシピ2:とうもろこしとスペアリブのスープ

 味つけは塩だけ。とうもろこしの芯から出る出汁とスペアリブとの組み合わせは、旨味たっぷり。澄んだスープの味は暑い日の体に染み込んでいく。 

画像: 味つけは潔く塩だけ。この組み合わせには生姜さえもいらない

味つけは潔く塩だけ。この組み合わせには生姜さえもいらない

<材料 4人分>
とうもろこし2本、スペアリブ8本、水2リットル、塩小さじ2〜

<作り方>
 とうもろこしは1本を4等分、さらに縦半分に切る。スペアリブは沸騰した湯に入れてさっとゆでる。
 鍋にスペアリブと塩、水を入れて、30分煮る。とうもろこしを入れてさらに10分煮る。塩で味をしっかりめに調味する。できればひと晩おくといい。スープは温かくても、冷たくても。肉には塩、クミンシードなどにつけていただく。

【今月のお酒セレクト:バテレ サピダ シングルホップIPA】

画像: PHOTOGRAPHS: COURTESY OF YUKIKO HIRANO

PHOTOGRAPHS: COURTESY OF YUKIKO HIRANO

人気急上昇中のバテレ醸造所は奥多摩にある小さな醸造所。少量生産で様々なスタイルのビールを作っている。通常のIPA(ホップを大量に使用してつくられる苦みが強めのビール)は数種類のホップを使うことが多いが、ニュージーランド産の1種のホップを使うことで香りが一直線に伸びる。「濁りのあるIPA。ワインもビールも濁りのあるものが好きです。苦味控えめでジューシーな格別な味。こんなビールでとうもろこしを味わえるのは大人の特権ですね」(平野さん)

ずっと身近に置きたい一冊──平野由希子さんの新著が発売!

 平野さんが、これまでの書籍では伝えきれなかった料理の原点をまとめた新著『ma cuisine おいしさの引き出し方』が好評発売中。「春夏秋冬野菜のことを思い続けている」「肉料理はつくれば作るほど、上手くなる」といった心に響く言葉とともに、野菜料理、肉料理、揚げ物、魚料理など約70品がずらり。家庭のキッチンでとびきりおいしく作るコツ、さらに調理のしやすさも追求した極上のレシピは、時代の流行に左右されない一生もの。まるで食材とお料理へのラブレターのような、ずっと身近に置いておきたい一冊だ。

画像: 「家でつくるからこそ、おいしいラタトゥイユをつくろう」と思い立って平野さんが追求してきた一品。美しい写真の数々にも五感が研ぎ澄まされる 撮影/ローラン麻奈

「家でつくるからこそ、おいしいラタトゥイユをつくろう」と思い立って平野さんが追求してきた一品。美しい写真の数々にも五感が研ぎ澄まされる

撮影/ローラン麻奈

画像: 驚くほどジューシーに焼き上げるコツとともに紹介される「鶏もも肉のポワレ」。見ているだけでも幸せな気分に! 撮影/ローラン麻奈

驚くほどジューシーに焼き上げるコツとともに紹介される「鶏もも肉のポワレ」。見ているだけでも幸せな気分に!

撮影/ローラン麻奈

画像: 『ma cuisine おいしさの引き出し方』 著者:平野由希子 判型:B5変形判・240ページ 価格:¥4,180 発行:誠文堂新光社

『ma cuisine おいしさの引き出し方』

著者:平野由希子
判型:B5変形判・240ページ
価格:¥4,180
発行:誠文堂新光社

平野由希子
素材を生かしたシンプルでおいしい料理に定評のある料理家。書籍や雑誌、広告で活躍するかたわら飲食店のプロデュースや商品開発も手がける。日本ソムリエ協会認定ソムリエで、ワインと料理のペアリングが楽しめる料理教室も主宰。
公式サイトはこちら

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