BY MIKA KITAMURA, PHOTOGRAPHS BY MASAHIRO GODA
今年、初のミシュラン一ツ星を獲得。日仏融合の唯一無二の料理を「氣分(きぶん)」で

「氣分の棒鮨」。定番の一品。鯖が多いが、秋〜冬は秋刀魚も。仕入れたばかりの魚を塩と酢で軽く締めることでフレッシュ感のある味に。
東京・西麻布の「氣分」は、今年最も衝撃を受けたレストランだ。シェフのユーゴ・ペレ=ガリックスは、15歳で料理の道に。日本で仕事をしていた叔父の影響で和食に興味を持ち、日本の「特定伝統料理海外普及事業」制度に応募。24歳で来日し、京都「菊乃井本店」で2年間、料理の技術はもちろん、京料理全般をみっちり学ぶ。さらに鮮魚店に頼み込み、厳しい修業の合間に魚の締め方と捌(さば)き方を教わった。その後、フレンチの名店、銀座「エスキス」で7年働き、料理長として重責を担うまでに。

「千葉より南瓜の親子仕立て」。かぼちゃの皮と種を煮出したスープにかつお節のだし。椀種は卵豆腐と薄切りにしたバターナッツかぼちゃ、松茸。
1960年代に始まった日本におけるフランス料理ブームは、料理人たちが本場に渡り、現地の味と技を懸命に学んだことに端を発する。60年後の今、フランスの若者が日本料理を学びに来日し、和とフレンチのエッセンスを融合した味を日本で創出している。

「千葉よりビーツ」。マリネしたビーツとイクラのだし醬油漬けに、大分産サフランのソース。赤しそのパウダーを振り、「赤の世界」を演出。
料理はフレンチの技やエッセンスを込めつつ、和食の要素が強めである。定番の棒鮨は、当日仕入れた魚をすぐおろし、軽く塩と酢で締める。棒鮨が生まれた江戸時代に白砂糖は使われていなかったため、酢飯にはきび砂糖を用いる。保存性の高い棒鮨をフレッシュ感ある仕立てにするのはユーゴ流だ。「料理の国籍は意識していない。食材に向き合うとき、実は何も考えていないんです(笑)」。料理人になって20年。技は体に染み込んでいる。食材と対峙したときの自分の感覚を一番大切にしているからこそ、枠組みにとらわれない鮮烈な味が生まれるのだろう。

ユーゴ・ペレ=ガリックス。2020年から銀座「エスキス」料理長、2024年「氣分」料理長。毎朝、豊洲市場へ通う。最も好きな食材は鱧(ハモ)。
氣分
住所:東京都港区西麻布4の11の282F
TEL.03(6433)5063
コース¥25,000~ 完全予約制
公式サイト
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