TEXT & PHOTOGRAPHS BY JUNKO AMANO
烏丸御池「御菓子丸喫茶」

コースの一品目は、花の香りを閉じ込めた寒天とイチジクの葉が香るアイスのイングリッシュブレックファーストティー
実店舗を持たず、京都を拠点に菓子を制作している「御菓子丸」が2025年3月から週末喫茶をスタートした。「御菓子丸」主宰の和菓子作家、杉山早陽子さんは、伝統な和菓子の技法や日本の素材で独創的な和菓子を制作。さまざまなブランドやショップ、アーティストとのコラボレーションを行い、日本のみならず海外からのオファーも多い。限定イベントやクローズドパーティ、茶会での提供も多く、これまではいただく機会が少なかっただけに、週末喫茶の登場はうれしい限りだ。

2014年より「御菓子丸」として活動する杉山早陽子さん
「わずかな衝撃でもそぼろが崩れてしまう繊細なきんとんや儚い琥珀糖、温かい菓子など、その場でしか楽しめない菓子を出したいです」と、杉山さん。
週末喫茶は、コース1種のみ。内容は月替わりで4種類の菓子と4種類の飲み物が供される。例えば、7月は夏の始まりをテーマに、1品目には口の中で花の香りが広がる寒天が登場。ひとつは自生するナワシロイチゴをラム酒漬けにしてバラの香りの寒天で閉じ込め、透明な球体は6月に咲いたクチナシの香りがふわり。

花の香りを”嗅ぐ”のではなく、食べて楽しむ新体験
4品のうちひと品には、砂糖を使わない塩菓子も供される。京都では7月の一ヶ月をかけて祇園祭が行われることにちなみ、3品目は、祭りの屋台を思い出すトウモロコシの塩菓子に。本葛や餡を練り、蒸し固めた後に表面を焼いた夏の京菓子、“葛焼き”を参考に、トウモロコシのペーストとトウモロコシの芯と昆布でひいた出汁を合わせ、葛で練り上げる。醤油を塗って焼き上げることで、焼きトウモロコシのような見た目に仕上がっている。

夏の屋台を彷彿させる見た目と香り、味わい。焼きとうもろこしのような見た目と葛ならではのむっちり食感のギャップも斬新
これまでも、食べて消えることに表現の可能性を感じてきた杉山さん。食べる行為を一つの体験と捉え、菓子には、四季折々の風景や記憶が込められている。

小枝をはじめ、身近にある自然物を集めて作る鳥の巣。夏、宇治川で目にするトビケラの巣をイメージし、白味噌のシュクセや山の芋と白小豆のそぼろ、植物性チーズを寄せ集めたきんとん

見た目は石ながら、実はふわふわなメレンゲを使った求肥餅。中にはイチジク餡入り
店内にはオンライン販売で人気の菓子が並ぶコーナーもあり。五感を揺さぶるアート作品のような菓子に出会える。

“模様を食べる”をコンセプトに、仏師さんに彫ってもらった特注の木型で生地に模様をつけた杏仁風味の焼き菓子「宝相華」¥3,800
「御菓子丸喫茶」が開かれるのは、ミシュラン星付きレストランを有する飲食施設「IDO KYOTO」内にある「IDOCHA」。「IDOCHA」では、定期的にアートイベントを開催していて、期間中、「御菓子丸」製の菓子をアートと共に楽しむ喫茶を開いていた縁から、週末喫茶をスタートすることになったという。

中庭には井戸があり、豊富な井戸水が湧き出る複合施設「IDO KYOTO」1F
昔ながらの和菓子であれば、4品もいただくのはよほどの甘いもの好きでない限りヘビーだが、「御菓子丸」の菓子は、あんこ一辺倒にならず、野草やフルーツ、スパイスなど、自然素材が巧みに取り入れられていて、甘ったるさは一切なし。6席一斉スタートの空間では茶席のような静かな時間が流れ、おなかも心も軽やかに店を後にできる。
「御菓子丸喫茶」
住所:京都市中京区室町通二条下ル蛸薬師町287 IDO KYOTO1F
営業時間:11:00〜、13:30〜、15:30〜の一斉スタート
菓子4種、ドリンク4種のコース¥8,025
Webからの完全予約制
定休日:月〜金、営業日の土日も不定休あり
TEL. なし
公式インスタグラムはこちら

天野準子
生まれてこの方、碁盤の目と呼ばれる京都の街中暮らし。雑誌やWEBで京都にまつわるライティングやコーディネートを行っている。プライベートでは、強靱な胃袋を武器に日々、おいしいものをハント
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