今年1月に開業した中国・上海郊外のリゾート「アマンヤンユン」。ダムに沈む悠久の森を周辺の古民家もろとも移し替えるという一大事業を成功させた実業家マー・ダードン氏が、オープンまでの経緯を語る

BY KYOKO SEKINE, PHOTOGRAPHS BY SATOKO IMAZU

 木の移動が終わるまでには3年以上かかった。「その頃の私はアマンの名前すら知らなかった。木々の移植後に、この土地を今後どう使えば、真の意味で“歴史遺産の後見人”となれるかを考え、香港大学とプロジェクトを組んでさまざまなリサーチを重ねた結果、博物館や芸術村にするなどいくつかの候補も挙がった。が、最終的には、多くの人々に利用されるアンティークなホテルを造ろうという結論に達した。そしてあるとき、幸運にもアマンに出会った。奇跡的だったのは、アマンもその頃、上海進出を望み、土地を探していたことだ。2009年初頭にエイドリアン・ゼッカ(アマン創業者)と初めて会い、互いの目指す方向性で意気投合した」

 偉業を成す人たちは互いに惹きつけ合う奇跡の力を有する。必然性により運命的な出会いへ導かれるのだ。理想を貫き続けた伝説のホテリエと、理想を貫きたかった若い実業家が出会い、互いの夢が合致した。

画像: レセプション棟とスイートやスパ、ブティックなどはモダンなデザイン

レセプション棟とスイートやスパ、ブティックなどはモダンなデザイン

 マー・ダードンは、世界中のいくつものアマンを巡り、アマンが成し遂げてきた“土地の文化や伝統を継承した特筆すべきリゾート造り”に魅了された。アマンを熟知する建築家ケリー・ヒルが招聘され、2010年、マー・ダードン、アマンチーム、ケリー・ヒルという精鋭チームがマスタープランを練り始め、2013年に建設工事に着手。その後、数年を経て現アマンのCEO、ウラジスラフ・ドロニン率いる新生アマンに運営が引き継がれ、2018年「アマンヤンユン」が完成した。志を貫いたマー・ダードンはリゾートのオーナーとなり、アマンヤンユンを熱い視線で見守っている。

画像: 中央に立つのが巨樹「皇帝の樹」。奥の建物はリゾートのレクリエーション棟

中央に立つのが巨樹「皇帝の樹」。奥の建物はリゾートのレクリエーション棟

画像: 故郷で「皇帝の樹」の傍らにあったオリジナルの古井戸もともに移設。水もここに実際に湧いている水で、あくまで忠実に井戸を再現している。ゲストの到着時にこの井戸の水を樹にかけるセレモニーも

故郷で「皇帝の樹」の傍らにあったオリジナルの古井戸もともに移設。水もここに実際に湧いている水で、あくまで忠実に井戸を再現している。ゲストの到着時にこの井戸の水を樹にかけるセレモニーも

 アマンヤンユンの敷地中央部を占める中庭には、中心に一本の巨樹が立ち、その太い幹には神聖な真紅のリボンが巻かれている。この樹こそ、マー・ダードンの壮大なプロジェクト“森を移す”礎となったクスノキの巨樹「皇帝の樹」だ。高さ約20m、重さ80トン、大人が7人がかりで手をつないでようやく取り囲める太さのクスノキの樹齢は、村の住民によれば1800年、公的には約1000年と発表されている。

 

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