日本の伝統衣装である「きもの」の遍歴を紹介する企画展、写真家・森山大道の「東京」の最近作を集めた写真展、また世界的な彫刻家リチャード・セラの日本では20年ぶりとなる個展など、現在開催中の3つのエキシビションのみどころを紹介する

BY MASANOBU MATSUMOTO

『リチャード・セラ:ドローイング』|ファーガス・マカフリー東京

 リチャード・セラは、鉄や鉛を使った巨大な彫刻作品で知られる美術家だ。もともとは画家であり、いくつもの絵の具を用意し、一定時間ごとにランダムに色を選び、塗っていくという“動作”や“プロセス”を重要視する作家だった。60年代後半になると、創作の対象を絵画から立体作品に広げていく。初期のよく知られた作品は、「巻く(to roll)」「裂く(to tear)」「持ち上げる(to lift)」といった“動詞の一覧”を用意し、実際に、鉛やゴムなどの可逆性のある素材に対して、それら動作を加えながら造形する《動詞のリスト》など。こうした作品は、伝統的な彫刻とは異なり、素材あるいは素材の変化やプロセスに創造性を見出したものであり、次第にセラは“アンチ・フォーム(反形体)”の作家として注目を集めていく。

画像: 『リチャード・セラ:ドローイング』の展示風景。セラの個展は日本では20年ぶりとなる INSTALLATION VIEW OFRICHARD SERRA: DRAWINGSAT FERGUS MCCAFFREY TOKYO, JUNE 2020 © 2020 RICHARD SERRA / ARTISTS RIGHTS SOCIETY (ARS), NEW YORK; PHOTOGAPH BY RYUICHI MARUO

『リチャード・セラ:ドローイング』の展示風景。セラの個展は日本では20年ぶりとなる
INSTALLATION VIEW OFRICHARD SERRA: DRAWINGSAT FERGUS MCCAFFREY TOKYO, JUNE 2020 © 2020 RICHARD SERRA / ARTISTS RIGHTS SOCIETY (ARS), NEW YORK; PHOTOGAPH BY RYUICHI MARUO

 長年、セラが彫刻とともに継続して制作してきたものにドローイングがある。ファーガス・マカフリー 東京で開催中の『リチャード・セラ:ドローイング』展は、そのドローイングの最新作「オリエント」シリーズから10点を紹介している。

 これらは、インクにシリカなどの鉱物を混ぜ込んだ顔料の上に紙を敷き、自身の身体を使って紙の下の顔料を薄く伸ばしていく方法で描かれている。粘着質の凹凸のある真っ黒い絵画は、そういったセラの身体的なアクションの痕跡であり、素材の物質性、身体性や重力ーー彫刻作品にも通じる、セラの中心的なテーマを反映した作品とも言えるだろう。

画像: 《Orient #1》2018. Etching ink and silica on handmade paper, 48 1/4 x 40 inches (122.6 x 101.6 cm) © 2020 RICHARD SERRA / ARTISTS RIGHTS SOCIETY (ARS), NEW YORK; PHOTOGRAPH BY ROB MCKEEVER

《Orient #1》2018. Etching ink and silica on handmade paper, 48 1/4 x 40 inches (122.6 x 101.6 cm)
© 2020 RICHARD SERRA / ARTISTS RIGHTS SOCIETY (ARS), NEW YORK; PHOTOGRAPH BY ROB MCKEEVER

 セラが興味深いのは、日本の影響を受けた作家であることだ。1970年、セラは約6週間、日本に滞在し、京都の禅寺・妙心寺で伽藍や庭園について学んだ。2001年、ブリントン大学で行われた講演会では「京都が私のものの見方を決定づけた」と話している。それぞれの要素を単体で見るのではなく空間全体で捉える庭園のあり方、“空っぽ”も存在であるという“間”という概念。こうした考えは、セラの公共空間での巨大な彫刻作品に昇華されていくのだが、ドローイングシリーズにもその鱗片は感じられる。

画像: 《Orient #12》 2018. Etching ink and silica on handmade paper, 48 1/4 x 40 inches (122.6 x 101.6 cm) © 2020 RICHARD SERRA / ARTISTS RIGHTS SOCIETY (ARS), NEW YORK; PHOTOGRAPH BY ROB MCKEEVER

《Orient #12》 2018. Etching ink and silica on handmade paper, 48 1/4 x 40 inches (122.6 x 101.6 cm)
© 2020 RICHARD SERRA / ARTISTS RIGHTS SOCIETY (ARS), NEW YORK; PHOTOGRAPH BY ROB MCKEEVER

 本展にあわせて、当ギャラリーが運営するデジタルプラットフォーム「FM FORWARD」では、2001年の講演会の際のセラの草稿を収録したオリジナルカタログを公開。7月8日には、ギャラリーのオーナーであるファーガス・マカフリーと、キュレーターで森美術館特別顧問の南條史生、タンサーの田中泯によるオンライン・ディスカッションも行われた。南條は、世界各地のセラの作品を実際に見ており、田中は、1990年、パリのオペラ=コミック座で自身が演出、振り付け、出演した『春の祭典』で、セラとコラボレーションした経験をもつ(セラは舞台美術を担当)。それぞれが、セラ作品のテーマである物質性や身体感覚、日本との繋がりについて話し、また田中は、パリでの共作時のエピソードにも触れた。このディスカッションの動画は、ギャラリーの公式サイト内でも公開されている。

『リチャード・セラ:ドローイング』
会期:〜9月26日(土)
会場:ファーガス・マカフリー東京
住所:東京都港区北青山3-5-9
開廊時間:11:00~19:00
休廊日:日・月曜、祝日
料金:無料
電話:03(6447)2660
公式サイト

※ 新型コロナウイルスの感染・拡散防止のための入場の際のルールは、各公式サイトをご確認ください。

 

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