BY NAOKO ANDO
3世紀から6世紀にかけての古墳時代に作られ、祭祀や魔除けなどのために古墳に並べられた埴輪。日本列島で独自に出現し各地で発達した、カワイイとしか形容のしようがないユニークな造形は、世界的にみても珍しいものだという。
冒頭で鑑賞者を出迎えるのが「埴輪 踊る人々」。埴輪と聞くと思い浮かぶ、丸い穴の目と口が特徴の埴輪だ。実はこの造形の埴輪は、後期のもの。初期の装飾が削ぎ落とされ、表現の省略が進んだ結果、シンプルでユニークな形が生まれた。東京国立博物館創立150周年を機に、文化財活用センターとクラウドファンディングなどで寄附をつのり、2022年から解体修理が行われ、2024年3月末に修理が完了。本展で修理後初のお披露目となった。
東京国立博物館所蔵の「埴輪 挂甲の武人」の国宝指定50周年を記念して開催されている本展の最大の見どころは、その「埴輪 挂甲の武人」の兄弟とも呼べる作品が、史上初めて5体揃って展示されること。群馬・相川考古館、アメリカ・シアトル美術館、千葉・国立歴史民俗博物館、奈良・天理大学附属天理参考館から東京国立博物館に集結した。挂甲(けいこう)とは、古代の甲冑の一種で、革や鉄板を革紐や組み糸で綴じ合わせたもののことだ。
いずれも群馬県太田市域の窯で焼かれ、同じ工房で作成された可能性も指摘される5体。微妙に異なる表情からにじみ出るキャラクターの違いを見比べる絶好のチャンスに、つい、「自分の“推し”はどれ?」と考えてしまう。東京国立博物館の展示もノリノリで、5人組の戦隊モノのように1体ずつにイメージカラーを設定している。照明を落とした展示スペースに、弧を描くように5体が並ぶ様子は圧巻だ。
本展はプロローグと5章、エピローグに分かれ、埴輪の成り立ちや歴史、種類などが自然に頭に入るように構成されている。なかでも第5章「物語を伝える埴輪」は、振り返る鹿や明らかに笑顔を浮かべている人物など、表情が豊か。これは、古墳に立てられた形象古墳が、さながら「古墳劇場」のように、何らかの物語を表現するためだという。
撮影可能な展示が多く、1体ずつじっくり鑑賞していると時間を忘れそうだ。本展は、2025年1月21日(火)から5月11日(日)の日程で、福岡・九州国立博物館に巡回する。
最後は、ミュージアムショップへ。埴輪をデザインしたバリエーション豊かなミュージアムグッズがずらりと並び、なかなか帰らせてもらえない。筆者がつい手を出してしまったのがクッキー型。カラーリングもデザインもポップで選ぶのが楽しい。これでクリスマスのジンジャークッキーを焼きまくろうと思っている。
『挂甲の武人 国宝指定50周年記念 特別展「はにわ」』
会期:12月8日(日)まで
会場:東京国立博物館 平成館
住所:東京都台東区上野公園13-9
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