BY T JAPAN

パリの中心地、パレ・ロワイヤル広場に立つカルティエ現代美術財団の新拠点。建築家ジャン・ヌーヴェルは、かつてのオスマン様式建築の外観はそのままに、内部を革新的な展示空間にデザインした
© Jean Nouvel / Adagp, Paris, 2025. Photo © Luc Boegly
パリの中心、パレロワイヤル広場に、いま最も注目すべきアートスポットが誕生した。カルティエ現代美術財団が新拠点を構え、開館記念展『エクスポジション ジェネラル』が、2026年8月23日まで開催中だ。パリ旅行の計画を立てているなら、この展覧会を目的地のひとつに加えたい。

建物の内部は、5つの可動式プラットフォーム(床)が縦横に動き、展示内容に合わせた空間を演出できる仕組みになっている
© Jean Nouvel ADAGP, Paris, 2025. Photo © Martin Argyroglo
この新しい空間は、建築家のジャン・ヌーヴェルが手がけたもの。かつてのオスマン様式の建築に、パリの街に開かれた大きなガラスの張り出し窓を配し、過去と現代が交差する場をつくり出している。5つの可動式プラットフォームが縦横に動き、映像、写真、舞台芸術、科学、工芸など、多様な表現に対応する柔軟な展示構造が特徴だ。芸術のジャンルを横断し、創造のプロセスごと包み込む姿勢は、1984年の設立以来、アーティストとともに試行と対話を積み重ねてきた財団のDNAそのものだ。

正面エントランスを入ると、小さな教会建築や未来都市の模型などが展示されている
©Marc Domage
現在開催中の『エクスポジション・ジェネラル』は、財団の約40年の活動を総覧する大規模展覧会。クラウディア・アンデュジャール、ジェームズ・タレル、蔡國強、石上純也、ディラー・スコフィディオ+レンフロ、デヴィッド・リンチなど世界的アーティスト100名以上による約600点が展示されている。これほどの規模のコレクション展示は財団史上初だ。

建築家、石上純也の作品《Chapel of Valley》(2016)
© JUNYA.ISHIGAMI+ASSOCIATES, Photography © Axel Dahl
展覧会は、現代アートの多様な側面を横断する4つのテーマ――「建築という装置(建築と身体、空間の関係性を探求)」「自然であること(自然環境と人類のつながりを見つめる)」「ものをつくる(素材や手仕事に焦点を当てる制作実験)」「現実の世界(科学、技術、フィクションが交差する未来像)」で構成されている。

イギリスの現代美術家、ダミアン・ハーストの作品《Wonderful World Blossom》(2018)
© Damien Hirst
いずれのセクションも、現代社会の課題や価値観の転換を、アートという視点から考察する内容だ。また、財団を代表するアーティストの特集展示や、個人・コラボレーションプロジェクトの紹介も行われ、財団が長年にわたり育んできた国際的な創作支援の軌跡を知ることができる。

展示の様子
Photography ©Marc Domage

展示の様子
Photography ©Marc Domage
セノグラフィはフォルマファンタズマが担当。19世紀の万国博覧会がこの地で果たした役割を背景に、多様な展示手法を参照しつつ、現代的な解釈として再構成している。技術と手仕事、歴史的文脈と実験性を行き来する展示空間は、アートの鑑賞体験を立体的に広げるものだ。
歴史と革新が交差するパレ・ロワイヤルという立地とともに、アートの現在地点を示す本展。パリの文化地図に新たな拠点が加わり、いま体験できる貴重な機会となっている。
カルティエ現代美術財団
Fondation Cartier pour l’art contemporain
2, place du Palais-Royal, Paris
公式サイトはこちら
問い合わせ先:カルティエ カスタマー サービスセンター
TEL. 0120-1847-00






