「ミラー ハリス」の創業者で、注目のフレグランスブランド「パフューマー H」の代表でもある調香師のリン・ハリス。その香りのアイデア源となる“ネイチャーハンティング”の朝の散歩に同行し、フレグランスづくりのプロセスを追った
BY AIMEE FARRELL, PHOTOGRAPHS BY JAMIE STOKERS, TRANSLATED BY CHIHARU ITAGAKI
2000年、ハリスはパートナーであるクリストフ・ミッシェルとともに、世界的なビジネス展開を視野に入れたフレグランスブランド「ミラーハリス(Miller Harris)」を立ち上げた。ジェーン・バーキンのオーダーで、彼女のためのフレグランス「レールド リアン」を作ったことでも有名なブランドだ。それから短い休止期間を経て、もっとスローペースで仕事をするため、ハリスは徹底的に厳選されたアイテムだけを扱う、小規模のフレグランスブランドを立ち上げることを決意した。それが「パフューマー H」だ。極めてパーソナルな雰囲気のこのブランドでは、自ら作り出した香水の並ぶ店頭でハリスが接客をすることもある。
セントジェームスのトップスにメゾンマルジェラのスニーカーといったシンプルな服装を好むハリス。彼女は最近、公園でノートを手に木陰に腰を下ろしては、新しいフレグランスの組み合わせを考えている。こうして頻繁に香りの採集散歩に出かけることでアイディアがわき、それが彼女の生み出す重層的な香りの出発点となるのだ。あるときは、嵐のあとの公園の匂いや、そこで見つけた花の香りを嗅ぎ分け“つかまえ”ようと試みる。またあるときは、彼女がここで見つけたものが、まったく別の香り――たいていは複雑で精緻な香り――を構成する40もの芳香成分のひとつになったりもする。