BY MIYUKI NAGATA, PHOTOGRAPHS BY JOHN CHAN
ヘアケアにおいても、革命的なアイテムが現れた。髪が気流によりローラーにみるみる吸い寄せられ、くっきりしたカールがつくれる「ダイソン」のエアラップである。「私たちはたったひとつで、さまざまな髪質・髪型の人が、髪にダメージを与えることなくスタイリングを楽しめる“何か”をつくりたかったのです」とエンジニアのカバナは言う。それを可能にしたのが、ダイソンがこれまで培ってきた流体力学の知見と、小型で強力なV9デジタルモーターだ。
「コアンダ効果という、流体力学の現象があります。適切な速さと圧力で気流を噴射すると、気流が物体の表面に沿って流れる現象で、エアラップはこれを利用して円筒のまわりに気流をつくり出し、髪を引き寄せます。コアンダ効果を発生させるためには、気流の速さと圧力を正確にコントロールしなければなりません。それを可能にする円筒のデザインに多くの時間と労力がかかり、完成するまで500近い試作品をつくりました」。濡れた髪を乾かすと同時にスタイリング。強い熱を使わず、髪がダメージを受けないのも魅力だ。
物づくりには困難がつきまとう。それがまだ世の中に存在していない、まったく新しいものであればなおのこと。世の中の人々が何を求めているのかを分析し、試作や実験を重ねながら、問題をひとつひとつクリアしてつくりあげていく。その製品によって誰かが美しくなり、ハッピーになることを夢見て。そんな彼らの想いと情熱が、私たちの未来の暮らしを少しずつ変えていく。