BY KANAE HASEGAWA
また、1940年に愛知県刈谷市で創業した木製家具メーカー、カリモクもこの数年、ミラノサローネへの出展を通して着実に評価を得てきた企業だ。テレビ台やミシン台などの木工加工品の下請けから始まり、戦後、国内向けの家具づくりを行なって、今ではソファ、テーブルから収納棚、ベッドに至るまで幅広い木製家具づくりに携わる日本最大の木製家具メーカーだ。
そんなカリモクは2009年、新たなブランド「カリモクニュースタンダード(以降KNS)」を立ち上げている。じつは日本製の木製家具でも、原材料である木材の80%以上は量産のための安定した供給が見込める輸入材に頼っているのが現状だという。こうした中、「KNS」は日本で家具用としては有効に活用されてこなかった国産のナラ、クリ材といった広葉樹の活用を目的として生まれた。デザイナーにはオランダ、スイス、ドイツなどの海外勢も起用。当初から海外への輸出を視野に入れていたからだ。しかし何よりも、ナラやクリ材を何世紀にもわたって家具に用いてきた国からやってきたデザイナーたちと、カリモクの技術者たちとの出会いが新しいクリエイションを生むことになった。
「優れた木工技術を持つカリモクの職人たちから大いに刺激を受けると同時に、ヨーロッパ人同士とは違って、異なる価値観や習慣を持つ者同士、理解に苦しむこともあります。でも、こうした認識のズレから、また新たな視点を得ることができるのです」とKNSに今年初めて参加したスイス出身のデザイナー、ディミトリ・ベーラー(DIMITRI BAHLER)は語る。こうしてヨーロッパと日本との“交配”によって、日本の家具とも、ヨーロッパの家具とも言い切れない、新しい魅力を備えた家具が生まれるのだろう。
今、多くの海外のデザイナーが日本の家具ブランドにラブコールを送っている。それは日本のモノづくりの技術が抜きんでているからだけではない。魅力的なモノを作る日本人とはどんな人たちで、どんな暮らしからアイデアが浮かぶのか――。欧米の感覚からすると不思議でならないから、一緒に仕事をしてその秘密を知りたいのだ。日本と異国の蜜月から生まれるモノづくりに期待したい。