モダンデザインを代表する名建築家・デザイナーが手がけた名作椅子より、2025年に再び復刻されたもの、構想から長い時を経て初めて製品化されたものまで、厳選紹介。新しい年のはじまりに、巨匠たちのデザインが光るマスターピースをお迎えしてみては?

BY EMI ARITA

渡辺力の「ひも椅子」

画像: 「ひも椅子」(完成モデル)¥107,800/モノ・モノ(メトロクス) COURTESY OF METROCS

「ひも椅子」(完成モデル)¥107,800/モノ・モノ(メトロクス)

COURTESY OF METROCS

「ひも椅子」は、昭和期に活躍したデザイナーの渡辺力が1952年にデザインした、日本のモダンデザイン黎明期を象徴する椅子。戦後から7年とまだ物資が乏しかった当時の時代背景から生まれた作品で、フレームは手に入りやすかったナラ材、シートは荷造りに使われていたロープを採用。家庭にある座布団を置いて使うことを想定し、クッションや張り地を省くことでコストを抑えた。シートハイ30cmと低めの設計で畳の上でも使いやすく、当時の日本の住環境にあわせた実用性も考え抜かれている。

画像: COURTESY OF METROCS

COURTESY OF METROCS

 2025年の復刻版では、完成モデルと、組立モデル、いずれかからセレクトが可能。組立モデルには、ロープを張る際に使う専用クランプや仕上げ用のオイルなどが付属し、椅子づくりの楽しさも味わうことができる。ふっくらと厚みのある別売りの専用クッションもあり。読書や映画鑑賞と、ひとり時間を楽しむ、とっておきのパーソナルチェアとして迎えたい。

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メトロクス
TEL. 03-5777-5866
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ハンス J. ウェグナーの「CH621 スウィベルチェア」

画像: 「CH621 スウィベルチェア」¥442,200〜/カール・ハンセン&サン COURTESY OF CARL HANSEN & SØN

「CH621 スウィベルチェア」¥442,200〜/カール・ハンセン&サン

COURTESY OF CARL HANSEN & SØN

“Yチェア”こと「CH24」はじめ、数々のマスターピースを生み出したことでも知られる、デンマークの巨匠ハンス J. ウェグナー。2025年にカール・ハンセン&サンが復刻した「CH621 スヴィルチェア」は、生涯にわたり約500脚を手がけたとされるウェグナー作品のなかでも数少ない回転式チェアのひとつ。1948年にデザインした作品で、フォルムの美しさや機能性のみならず、人間工学に基づいた快適性を追求し、腰をサポートしながら理想的な姿勢で座れるよう設計されている。

画像: COURTESY OF CARL HANSEN & SØN

COURTESY OF CARL HANSEN & SØN

 オリジナル版では、シートを回転させて高さを調整しなければならなかったが、今回の復刻版では、レバーで高さ調整ができるガス圧式の昇降システムへとアップデート。さらにキャスターは4つから5つに変更し、可動のしやすさと安定性も高まった。オーク材のシートとアーム、バッグを採用し、張り地はファブリックまたは、レザーから選ぶことができる。長時間作業でも疲れににくく、生活空間にも馴染むデザインと、リモートワークが普及した現代のライフスタイルにもぴったりな一脚と言えるだろう。

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カール・ハンセン&サン 東京本店 / 大阪 
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倉俣史朗の「HAL2 chair」

画像: 「HAL2 chair」¥308,000〜/イクスシー COURTESY OF CASSINA IXC.

「HAL2 chair」¥308,000〜/イクスシー

COURTESY OF CASSINA IXC.

 ガラスやアクリル、金属メッシュといった斬新な素材を使い、アートと家具の域を超えた作品を手がけたことで知られる、デザイナーの倉俣史朗。「HAL2 chair」は、カッシーナ・イクスシーの創業者・武藤重遠が倉俣の比類なき創造性に惚れ込み、1989年に製品化された椅子。倉俣作品に多用されているエキスパンドメタル製の背もたれは、正面、斜め、後ろと、どこから眺めても目を見張る美しさ。凜と輝いたり、静かに影を落としたり、受ける光や置く場所によって表情を変える姿には、“かたちと詩情の融合”という倉俣が追求し続けたデザイン美学が息づいている。

画像: COURTESY OF CASSINA IXC.

COURTESY OF CASSINA IXC.

 2025年、カッシーナ・イクスシーの創設50周年プロジェクトの一環で復刻を果たした新たな「HAL2 chair」では、小さな木片チップを接着剤で固めた合板「OBSボード」仕様と、クッション仕様、2種のシートを展開。前者はパールピンク塗装が施されているのもおしゃれ。後者は多彩な素材とカラーから張り地をセレクトできる。

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カッシーナ・イクスシー 青山本店
TEL. 03-5474-9001
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ニールス・ヨルゲン・ハウゲセンの「X-LINE CHAIR」

画像: 「X-LINE CHAIR」各¥46,200/HAY COURTESY OF HAY

「X-LINE CHAIR」各¥46,200/HAY

COURTESY OF HAY

 1977年にデンマークのデザイナー、ニールス・ヨルゲン・ハウゲセンがデザインした「X-LINE CHAIR」は10脚までスタッキングが可能で、アウトドアでも使用可能と、優れた利便性を持つ、北欧プロダクトの隠れた名作。アルネ・ヤコブセンのもとで経験を積んだハウゲセンは、ヤコブセンの工学的なアプローチを取り入れながら、最小限の素材と要素からなる機能美を追求。「X-LINE CHAIR」は、そんなハウゲセンのデザイン哲学をそのまま形にしたような作品となっている。

画像: COURTESY OF HAY

COURTESY OF HAY

 特徴は、名前の通り“X”にクロスしたフレームのデザイン。この構造により、すっきりとした細身のフレームながら、座る人の体重を支える安定感のある座り心地を実現させた。2025年、HAYより登場した復刻版は、ブラックやレッド、グリーン、ブルーなど、ミニマルな美しさを引き立てる豊富なカラーバリエーションも魅力。別売りのクッションやシートパッドとの併用もおすすめ。

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HAY JAPAN
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ポール・ケアホルムの「PK23 ラウンジチェア」

画像: 「PK23 ラウンジチェア」¥158,810〜/フリッツ・ハンセン COURTESY OF FRITZ HANSEN

「PK23 ラウンジチェア」¥158,810〜/フリッツ・ハンセン

COURTESY OF FRITZ HANSEN

 デザイン史に残る名作ながら、当時の技術や時代背景から、製品化が叶わなかった椅子もきっとたくさんあるのだろう。デンマークの巨匠、ポール・ケアホルムがまだ20代だった1954年にデザインした「PK23 ラウンジチェア」も、これまで製品化されることがなかった作品のひとつだ。
 スチールベースにあわせたのは、山から裾野が広がっていくように、背もたれから座面にかけて大きく幅を広げたシート。一度見たら忘れられない彫刻的なフォルムは、ゆるやかにカーブした成形合板のシェルを縦に二分割し、スチールパーツでつないで形成されている。

画像: COURTESY OF FRITZ HANSEN

COURTESY OF FRITZ HANSEN

 この大胆なデザインを、当時から成形合板技術とスチール加工技術に秀でていたフリッツ・ハンセンとともに形にすることを目指した、若きケアホルム。その挑戦が、約70年の時を経た2025年、ついに実を結んだのだ。シェルはブラックカラードアッシュ、ウォルナット、オークの全3種。ベースはステンレススチールまたは、ブラックの粉体塗装仕上げから選べる。

問い合わせ
フリッツ・ハンセン 東京
TEL. 03-3400-3107
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