和歌山県太地町ーー。クジラ漁の解禁された小さな漁村は、反捕鯨運動グループや報道者でごった返しになっていた。その現場を記録しながら、映画監督が紡いだメッセージとは

BY MASANOBU MATSUMOTO

画像: 捕獲されるクジラやイルカは、国外の水族館などに送られてきた © “OKUJIRA-SAMA” PROJECT TEAM

捕獲されるクジラやイルカは、国外の水族館などに送られてきた
© “OKUJIRA-SAMA” PROJECT TEAM

画像: 『ザ・コーヴ』騒動をきっかけに、太地町で滞在取材をしているジャーナリストのジェイ・アラバスターも映画の重要な語り部になった © “OKUJIRA-SAMA” PROJECT TEAM

『ザ・コーヴ』騒動をきっかけに、太地町で滞在取材をしているジャーナリストのジェイ・アラバスターも映画の重要な語り部になった
© “OKUJIRA-SAMA” PROJECT TEAM

 6年間にわたる取材期間中、東日本大震災のために中断を余儀なくされた時期があった。取材を再開する直前、溜まったテープを見直していた佐々木監督は「ふと、捕鯨問題を超えた普遍的なメッセージがあることに気づいた」と話す。ここで起きていることは、正義と悪の二項対立ではないこと。また正義とはひとつとは限らず、2つも3つも存在しうること。そして「太地町は、まさに現代社会の縮図だということです」。

画像: 『おクジラさま ふたつの正義の物語』 著/佐々木芽生(集英社) 取材撮影後、居住地であるNYに戻った佐々木監督が、 製作のいきさつや現地での出来事について改めて記した回顧録。 多様性や正義について考察を深めるのにうってつけの一冊だ PHOTOGRAPH BY SHUN UMEZAWA

『おクジラさま ふたつの正義の物語』
著/佐々木芽生(集英社)
取材撮影後、居住地であるNYに戻った佐々木監督が、
製作のいきさつや現地での出来事について改めて記した回顧録。
多様性や正義について考察を深めるのにうってつけの一冊だ
PHOTOGRAPH BY SHUN UMEZAWA

「多様性が謳われる一方で、特にブレグジット(EUからのイギリス脱退)の発表やトランプ大統領就任以降、分断という言葉が特別なインパクトをもって使われていますよね? 太地町の捕鯨問題に見られる分断は、いまや世界で起こっているんです」。だからこそ、佐々木監督は、映画の”物語の結び”を何度も再考したという。「本作を観終わったとき、それぞれが思考を巡らせ、自分の意見に辿り着けたら」と話す通り、クジラを巡る物語は、捕鯨の是非ではなく、多様性社会に生きるわれわれ自身のドキュメンタリーとして、その生き方を問う。

『おクジラさま ふたつの正義の物語』
2017年9月9日(土)より東京・渋谷のユーロスペースほか全国順次ロードショー
配給:エレファントハウス
公式サイト

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